健康保険を利用する処方薬は、ひとつひとつ国が「薬価」を決めているが、当時の医療機関は、医薬品メーカーから薬価より大幅に安い価格で薬を仕入れるのが当たり前となっていた。
薬価と仕入れ値との差によって生まれる「薬価差益」が、医療機関の収入に大きな影響を与えていたため、必要のない薬まで過剰投与して利益を上げていると疑われるケースが散見されるようになる。「薬漬け医療」という言葉が聞かれるようになるのもこの頃だ。
そこで、国は医薬品メーカーが卸す実勢価格を調査し、それに近づくように薬価を引き下げ、薬では医療機関が利益を出せない仕組みに変更。年々、薬価は引き下げられ、今では薬価差益はほとんどなくなっている。
そして、1974年(昭和49年)、医療機関を調剤から引き離す施策が断行される。まず2月に、それまで6点(60円)だった処方せん料を10点(100円)に、同じ年の9月に50点(500円)への引き上げを実施。つまり、医療機関が自前で薬を出すより、処方せんを書いて薬局に回すほうが利益が高くなるようにして、診療報酬での誘導を図ったのだ。
薬の在庫は医療機関の資産とみなされ、資産課税の対象になる。薬価差益で稼げればいいが、その旨味が減った今、医療機関も薬の在庫は抱えたくない。在庫を減らせれば税制上のメリットだけではなく、薬の管理にかかるコストを削減できて、たくさんの薬剤師を抱える必要もなくなる。
処方せん料の引き上げを機に医薬分業は徐々に広まり、2013年度は67%まで上昇。国民医療費に占める薬剤費は2割程度まで減少しており、医薬分業は医療費削減に一応の効果を発揮したといえるだろう。
過剰投与など健康被害防止目的の
薬剤師によるチェックが本来の意義
70年代以降、日本では医療費削減を目的に医薬分業が推進されてきたことは否めない。しかし、医薬分業の真の目的は、患者の健康を守ることにある。
薬は、正しく使えば病気やケガの回復を助けてくれるが、用量を間違えたり、飲み合わせが悪かったりすると、効果が薄れたり、相互作用が起きたりして、思わぬ健康被害を受けることがある。



