JR貨物が構築する「物流効率化の新機軸」

国をあげたモーダルシフト推進により、実際の物流現場でも、メーカー各社が商品輸送に専用貨物列車を活用するなど鉄道シフトの動きが拡大してきた。貨物ニーズの高まりを受け、JR貨物は「日本企業の新たな物流戦略」を構築している。(取材・文/『カーゴニュース』編集長 西村旦)

「運賃」「ダイヤ」などの商品づくりをテコ入れ。企業の物流効率化ニーズに応える

「鉄道を軸に」。荷主企業の変化

「鉄道貨物への期待度の高まりをひしひしと感じる」――そう語るのはJR貨物の営業部門を統括する真貝康一・取締役兼執行役員(鉄道ロジスティクス本部営業統括部長・営業部長)。以前は鉄道貨物の認知度がまだ低く、営業しても反応が乏しいことも少なくなかった。

JR貨物取締役・真貝康一/
1978年日本興業銀行入行、2003年みずほコーポレート銀行証券部長などを経て07年日本貨物鉄道事業開発本部グループ戦略部担当部長。15年同取締役兼執行役員鉄道ロジスティクス本部営業統括部長兼営業部長に就任。

 しかし、いまは荷主企業を訪問すると、企業のトップが自らトラックドライバー不足の現状に危機感を持っており、提案に対して打てば響く反応を示してもらえることが増加。荷主企業の輸送に対するポリシーが変わってきたことを実感しているという。「これまでの国内物流は、あくまでトラック輸送を基軸にして、鉄道や海運を補完的に活用するという考え方だった。しかし最近では『まず可能なところは鉄道で』と、鉄道輸送を軸に考える企業が増えてきた」。

 一般的に、鉄道貨物は輸送距離500キロメートルを超えるとトラック輸送に対するコスト競争力が出てくるといわれているが、最近では輸送距離300~400キロの中距離でも鉄道を利用しようという動きが増えているという。

「トラック運賃が上昇してきたこともあり、以前は鉄道輸送の事業領域に入っていなかったところにまで対象が広がってきている」

 事実、最近のJR貨物のコンテナ輸送実績は、トラック輸送の伸び率を上回る基調が続いている。8月の輸送実績は前年同月比3.8%増の187万トンで、品目別でみると、食料工業品が9.3%増、宅配便などのトラック貨物(積合わせ貨物)が13.3%と特に伸びが著しい。

「食料工業品は夏場ということもあり、飲料やビールの出荷が大きく伸びた。また、積合せ貨物はまさにドライバー不足の影響から幹線輸送を鉄道にシフトする動きが鮮明に表れている。こうした品目は特に鉄道への適合性が高く、コストやリードタイムの面で折り合いがつきやすい」。

 また、自治体などから出される一般廃棄物などエコ関連物資も14.8%と好調な伸びを示している。「コンテナが本来持っている密閉性の高さが評価され、自治体からの一般ゴミなどの鉄道シフトが順調に拡大している」。

 とりわけ伸びが目立つのは上記3品目だが、鉄道の利用意欲は業種や品目を問わずおしなべて高い。それ以外の品目では、景気回復の遅れから生産量が低調に推移しているため伸び率としては目立たないが「それぞれの業界内での鉄道利用の比率は着実に増えている」という。

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