鉄道貨物の新時代を象徴する「イオン号」
鉄道貨物の活用事例が増えるなか、JR貨物が「将来の進むべき道を示す先行事例」としてモーダルシフトのうねりを象徴する成功事例に位置づけているのが、東京―大阪間を往復で結ぶ専用列車「イオン号」の運行だ。
流通最大手のイオンが仕入先である食品・日用品メーカーと連携して専用列車を編成したもので、年末商戦を控えた昨年12月に第一弾を運行したのに続き、大型連休前の今年4月、お盆商戦を前にした同7月とこれまでに計3回にわたる運行を実施した。
参加メーカーにはアサヒビール、江崎グリコ、花王、ネスレ日本、味の素、サッポロビール、P&Gジャパン、クレシアと錚々たる社名が並ぶ。
イオン号が新時代のモーダルシフトの成功事例に位置づけられる理由は、荷主サイドとJR貨物の双方にとってメリットが実感できる「WIN-WINの関係」を構築できたから。
イオンや参加メーカーにとっては、専用列車化によりドライバー不足の解消につながるほか、リードタイムやコストの面でも望んでいたレベルをクリアすることができた。
一方、JR貨物にとっても平日にくらべ運行本数が少ない日曜日に運行することで、機関車や貨車など機材の有効活用につながり、収入増に直結する。
そして何よりも、「企業単体の取り組みでは物流効率化に限界が見え始めたなかで、複数企業が一体となって鉄道を利用する枠組みができたことが大きい」と真貝氏は指摘する。
「イオンさんは約4年前から仕入先メーカーや物流会社などが参加する鉄道輸送研究会をつくり、鉄道貨物を軸にした物流構築を定期的に検討されてきた経緯がある。そうした取り組みの結果がイオン号の運行に結実した。今後も同様の企業連携の動きが他業界でも広がることを期待しており、当社としてもそうした取り組みを積極的に支援していきたい」。