開拓の余地はまだまだ十分にある
ただ、流れは大きく変わったものの、改革はまだ緒についたばかり。
「かなり向上してきたとはいえ、鉄道貨物の輸送手段としての認知度はまだまだ不十分。例えば同じ製品をつくっている同業の企業でも、A社は鉄道を積極的に使っているが、B社はまったく使っていないといった事例もある。逆にいえば、まだまだ新規開拓の伸びしろがあるということ」(真貝氏)
積載率の面でもまだ余力はある。直近の数字では、コンテナ積載率が70~50%の列車が35%、50%未満の列車が13%あるという。
「つまり積載率70%未満の列車がまだ半分近くある。もちろん、埋まらない背景には運行区間やダイヤ、リードタイムなどの要素があるが、ここに運賃の弾力化など柔軟な営業施策を絡ませていければ、改善の余地は十分に残されている」。
ドライバー不足の顕在化により、輸送供給力に限界があるという認識が改めて広がっていることは、荷主企業が物流に対する考え方を変える契機ともなり得る。
「JIT(ジャスト・イン・タイム)に代表される速達化が求められる一方で、安定輸送を確保することの重要性が見直されていることも事実。急がないものは無理に急ぐ必要はないという考えに立てば、鉄道貨物の使い方もさらに広がってくるはず」。
営業のプロを大幅増員
JR貨物の当面最大の経営課題である2016年度の鉄道事業黒字化を達成するためには、輸送量をさらに増やすことが求められる。新規需要の開拓、既存顧客の深掘りなど営業部門に課された役割は大きい。
そのなかで同社は今期、初の試みとして営業職の中途採用を行い、1000名を超す応募者の中から23名の営業マンを採用した。
「いずれも経験豊富な営業のプロ。すでに研修を終えて即戦力として本社や支社に配属されており、新規顧客の開拓で力を発揮してくれると大いに期待している。もちろん鉄道輸送は当社だけで完結するものではなく、駅の集配を担当する利用運送事業者(通運事業者)とのパートナーシップが不可欠。営業活動でも当然、利用運送事業者の各社と連携し動いていきたい」。
かつてないほどのモーダルシフト熱の高まりをしっかりと受け止め、産業界や社会の要請に応え切れるか――。JR貨物の今後に国内物流の行方がかかっているといっても過言ではない。