JR貨物が構築する「物流効率化の新機軸」

変わる営業部門

 JR貨物は石田氏が会長に就任して2年。経営改革の波は営業部門にも大きな変化を生んでいる。「お客様重視、マーケット志向の考え方が改めて徹底されたことで、営業活動のあり方や商品づくりが変わってきた」という。

 営業マン一人ひとりの動き方が変わることで、利用者の声やマーケットニーズをいち早くキャッチできるようになり、それを輸送部門が担当する商品づくり(=列車編成)に迅速に反映していくサイクルが定着しつつあるという。

 その成果が如実に表れた事例が、今年7月末に苫小牧沖で発生したフェリー火災事故での対応だ。

 関東~北海道間の物流はもともと海運と鉄道の利用比率が高く、特に事故が起きたのが盆休みを控えた高需要期に当たっていた。そこでの同社の対応は早く、事故発生数日後には臨時列車の運行を開始し、逼迫する輸送需要を支えた。

「これだけに限らず、需要に応じ柔軟に輸送ルートを設定するなど確実に施策を打つ手が早くなっている。また、機材に余裕のあるお盆や年末年始などの時期には、『運行コストを賄えるものがあればいい』という前向きな考えで臨時列車の編成を即断即決できるようになってきた」(真貝氏)

 同様の変化は設備投資にも表れている。JR貨物の機関車や貨車は国鉄時代のものを引き継いでいる部分も多く、老朽化対策として毎年高いレベルでの更新投資を強いられる。

「ただ、そうした状況のなかでも収入拡大のための積極的な投資を増やしている。マーケティング機能を強化したことで、投資すべきものに投資するというメリハリが効くようになってきた」。

大型トラックと鉄道の載せ替えが容易にできる「31フィートコンテナ」

 大型トラックの荷物がそのまま載せ替えられることからモーダルシフトの有効なツールとして期待されている「31フィートコンテナ」については、今年度に40個を新造して100個体制まで増やし、コンテナの偏在を抑えることにより往復で使える体制を整えた。また、温度管理コンテナの開発や貨物駅の改良や拡充にも積極的に投資を振り向けている。

「これまでは、需要の芽をキャッチしたとしても、社内で『本当に大丈夫なのか』と問われると営業部門が踏みだせずに、みすみすチャンスを逃がしてしまうということがあった。しかし、いまはマーケティングの精度が上がってきたこともあり、お客様の声に対応し、前向きにチャレンジできる流れができてきた」。

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