AECに続く大構想も始動している。日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドが、それぞれASEANとの間でもつ計5つのFTAを束ねるRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉が進んでいるのだ。実現すれば世界人口の約半分(34億人)、GDP約20兆ドル(世界の3割)をカバーする広域経済圏が出現する。
しかし牛山氏は、実態経済ではすでに統合が進んでいると指摘する。「最も進んでいるのは関税の撤廃で、すでにシンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ブルネイの先行6カ国の間では関税がほとんど撤廃されています。2018年には残る4カ国もこれに続く予定で、そうなればASEAN内ではモノが完全に自由に動くようになります」。
ASEAN熱を示す3つの動き
世界経済におけるプレゼンスを着々と高めるASEANに、日本企業はどう切り込んでいっているのか。牛山氏に3つの目立つ動きを挙げてもらった。
1つは、非製造業の攻勢だ。日本企業による対ASEAN投資に占める非製造業の割合は、すでに5割を超えている。狙いはもちろん膨らみ続ける内需だ。2020年代半ばには消費規模で日本を追い抜くことが予測されている。
消費需要を見る際に注意しなければならないのが、地方と都市の格差だ。
「平均値で見ると判断を誤る。ジャカルタ、バンコクといった大都市の1人当たりGDPはゆうに1万ドルを超していて、日本人とそれほど変わらない消費スタイルが広がっている」
大手コンビニは、飽和状態にある日本よりもASEANで出店数を増やしている。大手4社の2014年の新規出店は対前年比で13%増で、ASEAN域内の店舗数は1万3000を超えている。
所得水準の上昇による、モノからサービスへのニーズの移行も顕著だ。日本総研の調査では、「健康のためにスポーツジムに通う」割合は、シンガポール、クアラルンプール、バンコク、ジャカルタ、ホーチミンで、東京よりも高い。「子どもに習い事させている」世帯の割合も、クアラルンプール、ジャカルタ、ホーチミンで、東京を上回った。