創立50年を機に、全社的な構造改革による経営体質の強化に踏み出した研光通商。それを推進する経営業務基盤として、同社はオラクルのパブリック・クラウド型ERPシステムを会計、流通、経営管理領域と全面的に採用した。「事業にかかわる全てのデータを統合/蓄積できるだけでなく、それを企業経営でリアルタイムに活用する手段まで用意されていることが決め手になった」とプロジェクト責任者は話す。

全社構造改革に伴い
老朽化したERPシステムの刷新を決断

研光通商 執行役員 経営企画室長の松田仁氏

 健康/栄養補助食品や化学工業薬品の専門商社として知られる研光通商は現在、国内のほか中国、インドなど世界8ヵ国に拠点を構え、グローバルにビジネスを展開している。

 1965年の設立以来、創業者社長の卓越した経営手腕の下で事業を拡大してきた同社は、創業50周年となる2015年に生え抜きの現社長が就任したのを機に、将来の株式上場も視野に入れた抜本的な構造改革に乗り出す。海外子会社も含めたグループの経営管理基盤を強化するとともにガバナンスを高め、属人化が進んだ業務の標準化/効率化を図ることで、変化の激しい経営環境に俊敏に対応しながら、さらなる成長を目指そうというのだ。

 この取り組みの中で大きな問題として浮上したのが、事業運営の根幹を支えるERPシステムである。国産ERPパッケージで構築された同社のERPシステムは、経営層が期待する「経営および現場におけるスピーディな情報活用と意思決定の支援」という役割を担えないと考えられたのだ。同社 執行役員 経営企画室長の松田仁氏は次のように説明する。

「既存のERPシステムの最大の問題点は、蓄積したデータを企業経営でスムーズに活用できないことです。経営課題を議論するための分析レポートを作るためには、ERPシステムが生成したデータを表計算ソフトでさまざまに加工しなければならず、月々のデータを締めて実績をレビューするまでに約1ヵ月を要します。経営にスピードが求められる今日、これでは遅すぎます。また、このERPパッケージは約10年前に導入したものですが、現状も採用企業数が少ないためか、製品の機能強化がスムーズに進んでいません。先々を考えると、これも深刻な問題でした」(松田氏)

 しかも、このERPシステムで業務ユーザーが利用するクライアント・アプリケーションはWebブラウザの特定バージョンに依存している。このバージョンはすでにサポートが終了しており、今後も使い続ける場合は多くのコストをかけて最新バージョンに対応させなければならない。

 さらに、ERPシステムを稼働させるサーバーが研光通商の東京オフィスに設置されており、オフィス内からしかアクセスできないことも問題だった。外出先や出張先で業務処理に使うことはできず、海外拠点からも利用できない。今後、経営改革の一環としてグループ各社のバックオフィス業務の統合を図り、その効果を最大化する上でも、これは大きな障壁と考えられた。

 加えて、「オンプレミスのシステムであることから運用保守に多くの手間がかかり、経営層や現場スタッフのより高度なIT活用の支援にIT部門の人的リソースを十分に割けないことも大きな問題でした」と松田氏は話す。

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