静岡県富士市にある小さな企業相談所が、いま日本中の中小企業から注目を集めています。「富士市産業支援センター(通称f‐Biz/エフビズ)」の支援を受けた多くの会社が、次々と新たな商品やサービスを開発し、目覚ましい成功を収めているのです。経営不振の町工場から、ほとんど仕事のない個人事業主まで、見事に蘇っていくのです。
その秘密は、f-Bizセンター長・小出宗昭さんの独自の戦略にあります。その戦略とは何か?このたび、ダイヤモンド社から『御社の「売り」を見つけなさい!』を上梓した小出さんが、豊富な実例を示しながら、企業再生のポイントをわかりやすく解説していきます。

社長は意外と気付いていない自社の本当にすごい点

 私が企業支援で最も力を注いでいることは、その会社の唯一無二の「セールスポイント」を探し出すことです。
 どんな会社でも「オンリーワン」の長所が必ずあるはずです。しかし中小企業の経営者と話をすると、たいてい皆さん「うちの会社は何もない」とおっしゃいます。

 社内にいるとどうしても距離が近すぎて、自分の会社が客観的に捉えづらいものです。 いわゆる「常識」に縛られて見えづらくなっているのでしょう。

 創業何十年の実績を持つ経営者でも、年商100億円規模の企業の経営者であっても、これは同様で、多くの経営者が真のセールスポイントをつかめていないように見受けられます。

 真のセールスポイントとは、他では見られない「光る部分」です。これが、埋もれた原石のごとく磨きをかけることで輝きを放ち、他の追随を許さないゆるぎないセールスポイントとなるのです。

 では、この埋もれた真のセールスポイントを見つけるにはどうしたらいいのでしょう?それにはまず、「普通は〇〇である」「一般的には〇〇だ」といった常識や思い込みを一切捨てることが必要です。

 現在の主力商品にとらわれすぎていて、本当の「光る部分」を見逃しているケースが少なくありません。

 プレス用金型メーカー「株式会社増田鉄工所」さん(富士市)の事例です。同社は、通常なら一つひとつの部品を製作し、組み立て、製造する金型を、「一体構造で加工する」という画期的な技術を開発したものの、売れ行きが伸びず悩んでいました。

 話を伺っていて気付いたのは、単にそれを技術性の高い金型として売ろうとしているから売れないのではないかということでした。そこで、金型という「モノ」を売るのではなく、この金型がもたらす効果をクローズアップし、お客様の抱える課題を解決する「ソリューションビジネス」として売り出してみてはどうかと提案しました。

 こうして誕生したが、「金型革命5(ファイブ)ダウン」というサービスです。「加工面数減」「部品点数減」「購入品数減」「原価管理減」「経理処理数減」という5つのポイントから、「品質アップ」「短納期」「コストダウン」というメリットが得られるというものです。この商品名でチラシを作成し、取引先に新サービスとしてPRしたところ、ひとつ500万円もする金型なのに半年間で50件程の契約を得ることができました。