とにかく仕事ができない人は「なる早で」と言う。じゃあ、仕事ができる人は何と言う?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。
「なる早で」って言ってない?
ビジネスシーンで、つい使ってしまう言葉に「なる早で」「できる限り」などの曖昧表現があります。
仕事を依頼するときに使うこの表現、相手のスケジュールに割り込むのですから、時間を明示しにくいのはわかります。
ただ、「自分がされて嬉しいこと」で考えると、はっきり「何時までに」と言ってもらったほうが、仕事の段取りをつけやすくなるのではないでしょうか。
「なるはや」の認識が相手と数時間も違うかもしれませんし、指示された方は自分の優先順位を試されているようにも聞こえます。
抽象的な表現も、時にトラブルの原因になります。
「今日はたくさんお客様が来社されるので、密を避けて広めの会議室を予約してください」
「若い世代に人気の、お手ごろな商品です」
「たくさん」「広め」「若い」「お手ごろ」。いずれも人や状況によって捉え方が異なります。
「イメージしていたより小さい会議室で、椅子も足らなかった」「購入しようとしたら、思ったより高かった」というトラブルの元になります。
「これ」を付け加えよう
ある30代のビジネスパーソンと、「部下ができる上司への気づかい」をテーマに話をした際、彼は「数字で伝えること」だと力説していました。
それは、相手に時間的な負担をかけないためです。
たとえば、半期ごとの評価面談では、半年前に掲げた「定性目標」も数字にして持っていくのだそうです。
定性目標が「メンバーのモチベーション喚起」であれば、そのために実施した1on1 ミーティングの実施回数とビフォーアフターの業績変化であれば数字であらわせます。
「皆、イキイキ働いてくれています」と抽象的に伝えられる成果よりも、上司は評価しやすくなります。
迷わせない、悩ませない気づかいは、自分を正しく評価してもらうという利点にもつながります。
「今日は10名のお客様が来社されるので、密を避けて20人以上収容の会議室を予約してください」
「大学生を中心に1週間で1000個売れた1200円の商品です」
数字を使うと他にとらえようがありません。
コミュニケーションロスは、双方にとって心の負担と時間の損失。
数字に「限定」して伝えることは、それらを防ぐ「気づかい」なのです。
(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。