米国株「オミクロンショック」で急落、復調と調整長期化の“分岐点”Photo:PIXTA

オミクロン株ショックで下落する米株式相場に、パウエルFRB(米準備制度理事会)議長のインフレファイターに傾く発言が追い打ちをかけた。コロナ禍下の超ド級の株式金融相場は、初の試練に直面し、当面の明暗を分ける境界域に押し込まれている。この分岐リスクの実態を明らかにし、投資家にとって、その先の光明がどう現れるかを考える。(田中泰輔リサーチ代表 楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー 田中泰輔)

オミクロン株とテーパリング
早期終了示唆のダブルショック

 米株式市場はコロナ禍下の大金融相場を享受してきた。金融相場とはFRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和下で、低金利で潤沢な流動性供給(すなわちカネ余り)ゆえの株高である。この金融相場に想定される最大リスクは金融緩和政策の見直しだ。

 コロナ禍の経済を支えるために打ち出された超ド級の金融緩和措置の最初の見直しはテーパリング(量的緩和としての債券購入の減額)だった。パウエルFRB議長は、テーパリング決定に向けて慎重に市場と対話し、事前に織り込ませ、無用な混乱を首尾良く回避した。

 それが11月30日に、テーパリングを早めて早期完了を検討すると示唆。よりによって株式市場が新型コロナの新変異オミクロン株登場を恐れて急落するさなかであった。このオミクロン株ショックとパウエル発言ショックにダブルで見舞われた金融相場は、一線を越えた調整になるかどうかの境界域に追い込まれた。

 本稿が公開される時点で、相場が持ちこたえていれば、復調の目からチャンスも期待できる。しかし明暗の分岐は案外ささやかなきっかけで起こりうる。その事情を整理し、間に合えばリスクに備え、その先の好機を捉える構えを考えたい。

 11月26日、高い感染力が見込まれる新変異株の登場に、株式相場はパニック的下落となった。特にデルタ株感染が最悪の広がりを見せていた欧州で、新変異株への恐怖が増幅的に株価下落に表れた。この流れを引き継いだ米国では、感謝祭明けの堅調相場期待が強かった分、オミクロン株がカウンターパンチとなった。

 オミクロン株の脅威はまだ判然としない。しかし相場は往々にして、原因が正体不明であることへの不安で急落する。その不安は、原因の素性より、損益が不安定なリスクにさらされる自己の投資ポジションの反映、すなわち投資家心理の問題である。今回の相場の弱気反応は、10月からの大相場によって比較的高いコストで形成されたポジションがあだ花となった面がある。

 相場下落は投資家の不安を強め、情報過敏にさせやすい。市場は、ファイザー社CEO(最高経営責任者)の「新変異株対応ワクチンを100日以内に供給する」趣旨の発言を好感した後、モデルナ社CEOの「既存ワクチンでは効果が弱いかもしれない」との発言で大急落した。

 両コメントは、既存ワクチンは効かないかもしれず、早急に対応するという趣旨で捉えれば、明暗に差はないと思えた。メディアによる発言の切り取り方の問題もあろうが、下げ相場渦中の投資家は、ささいな物音だけで逃げ出すようなビクついた心理状態にある。