リーグ終盤を残して、総入場者数が過去最高を更新したリーグワン。だが、ビジネス目線では「完全プロ化」「スタジアム確保」など課題も残っている。前期の5位から躍進して、早々とプレーオフ進出を決めた東芝ブレイブルーパス東京の荒岡義和社長に「収益構造」や「選手の年俸」「社名を掲げる意義」などラグビークラブ運営について直撃。メディア初公開、具体的な数字も満載のロングインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
総入場者数は過去最高を更新したが
リーグワン設立当初の目標は「道半ば」
3227人、4436人、6375人――。この数字は今年で3年目となるジャパンラグビー リーグワンの平均入場者数の年平均の推移だ(3期目のディビジョン1の1試合平均は9228人、4月7日時点)。
2023-24シーズンは、リーグ終盤を残して総入場者数が過去最高を更新した。今後、プレーオフが残っていることを考えると、さらに大きく入場者数を伸ばす可能性が高い。
観客数が増えた要因は、新型コロナの感染拡大が落ち着いたことに加えて、(1)海外スーパースターの参戦、(2)各クラブの努力によるものだろう。
海外トップ選手では、アーディ・サべア、ボーデン・バレット(共にニュージーランド代表)、チェスリン・コルビ(南アフリカ代表)など、強豪国の主軸が日本でのプレーを選択。23年のワールドカップ決勝を戦った南アフリカ、ニュージーランドの選手のうち、13人が今季リーグワンに所属している。
市場規模に違いはあるが、プロ野球やJリーグと比較しても、世界トップ選手を間近に見られるという意味では最も恵まれた環境にある。日本選手の競技レベルも向上し、試合内容の質は着実にレベルアップしている。
一方、「プロリーグ」としては依然として課題が残っている。各クラブの努力もあり観客数は増加しているが、リーグ創設時に掲げた目標である「1試合当たり1万5000人の観客動員(ディビジョン1)」「スタジアム確保」「収支の透明性」などは道半ばなのだ。
ファンにとって海外トップ選手の来日はうれしいが、収益力が向上しないまま「経費だけが増えていく」状況は危険でもある。実際、ラグビー発祥の地である英国のプロリーグでは、年俸高騰により経営破綻も起きている。次の不況時を乗り越えるためにも、構造改革の手を緩めてはいけないだろう。
そこで今回は、前期の5位から躍進して早々とプレーオフ進出を決めると同時に、事業面でもいち早く「企業の福利厚生」から脱却し、事業会社として独立法人化した東芝ブレイブルーパス東京(東芝BL東京)の荒岡義和社長を直撃。「事業としてのラグビーの可能性」「乗り越えなければならない課題」「東芝再生のシンボルとしてのラグビー」などロングインタビューをお届けする。
条件面で厳しいスポーツではあるが
マーケットの拡大余地は大きい
――リーグワンのビジネス面での課題をどう見られていますか。英国でプロチームが破綻するなど、ラグビーは採算の取りにくいスポーツだという声もあります。
確かに条件面では厳しいスポーツですね。ラグビーの場合、野球はもちろん、サッカーやバスケットと比較しても試合数が少ない。
チームの人数も多く、同じような形は目指しにくいと感じています。試合数を増やそうにも、肉体的に激しいスポーツなので大きく増やすことは難しい。
今の1シーズン16試合のリーグワンの運用だと、ホームの試合は8試合だけです。全チーム総当たりでホームとビジターでやっても22試合なので、ものすごく制約を受けます。
一方、ワールドカップでの集客を考えると、まだまだマーケットの拡大余地はあると見ています。東芝BL東京の昨シーズンの1試合平均の観客数は6000人弱ですが、今季の13節までの平均観客数は9602人まで伸びています。
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