「変なことをやって失敗する人」と「新しいことをやって成功できる人」を分ける決定的な差

この3月に『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』を出版した株式会社じげん代表取締役社長の平尾丈氏。25歳で社長、30歳でマザーズ上場、35歳で東証一部へ上場し、創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家だ。
そんな平尾氏が「別解力の高いビジネスパーソン」として尊敬しているのが、伊藤羊一氏。Zアカデミア学長として次世代リーダーの開発を行いながら、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長として、学生に向け起業家精神も教えている。著書『1分で話せ』は56万部を超え、数々の書籍を出版するベストセラー著者としても知られる。
不確実性が高く、前例や正攻法に頼れない時代に圧倒的な成果を出す「起業家の思考法」について、おふたりに語っていただいた。
連載の第2回は、会社員の目線から見た「別解力」ついて、20年以上大企業に勤めてきた伊藤氏の意見を聞いた。
(写真 津田咲 構成 林拓馬)

すべてにおいて「絶対はない」と思った

――前回、会社員として「優れたやり方」を歩んできた伊藤さんが、ソフトバンクアカデミアと出会い「自分らしいやり方」を意識するようになったお話を聞きました。

伊藤羊一(以下、伊藤) 僕が「アントレプレナーシップ」に目覚めたのは44歳なんですよ。その後、「起業」という手段は取っていませんが、アカデミアをつくったり、大学で新しい学部をつくったりしてきました。

 いろんな起業家の方とお会いすると、アントレプレナーシップにはやっぱり若い時や、大学での出会いで目覚めている方が多くて。僕は20年くらいギャップがあると思っています。

 もう時間は戻らないので、いろんなことを考えましたよ。

「待てよ。俺44歳だけど、25歳って思えば別に変わんないんじゃね」とか、「若者に混ざって話せばいいのかな?」とか。年齢でコンプレックスはありましたね。

平尾丈(以下、平尾) 東大出て、日本興業銀行に勤められて、スーパーエリートですよね。その道を進まなかったのはなぜですか?

伊藤 40年くらい前だったら、「優れたやり方」を何も気にせず突き詰めて、スーパーエリートで行けたと思います。でも、ソフトバンクアカデミアがきっかけで「いまの社会は、そうなっていない」とわかっちゃったんですよね。

平尾 会社で働いているとき、出世ルートの方に意識は向いていましたか?

伊藤 僕は26歳の頃にメンタルをやられたので。いわゆる出世ルートにそもそも馴染めなかったんです。とはいえ、メンタルが回復しても旧態依然のルートしかなかったから「じゃあ、頑張ろうか」と思って。その後も会社員を10年頑張ってきたんです。

 会社の中で「優秀なやり方」はできるようになって、旧来のルートに乗っていたんですけど、無意識のうちに違和感はありました。「俺が馴染めない社会って、なんかイマイチだな」と思ってたんです。

 そんな時にアカデミアがあって、それから2011年の震災もあって。自分に雷が落ちました。

「すべてにおいて、絶対は無い」と思ったんです。

平尾 今、世の中では多様性が語られるようになりました。だからこそ、仕事に個性を活かせる「別解力」を広げていきたいと思っています。もし、それが妨げられるとしたら、背景には何があると思いますか?

伊藤 やっぱり組織って「慣性の法則」がありますよね。「優れたやり方」で生きてきて、それが正しいと思っていたら、「自分らしいやり方」や「別なやり方」は、ノイズにしか見えないんです。そこに大問題があって、「お前らが言っていることは戯言だ!」となりがちなんですよ。

 とはいえ、「優れたやり方」がメインストリームじゃなくなってきているのは、みんなわかっているんです。とくに経営者の人たちはめちゃくちゃ危機感を持っています。

 だから、大企業も新規事業を立ち上げたり、アクセラレータプログラムやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)をつくったりしているわけです。

 ほんの一部のところに「優秀なやり方」だけの人は残ると思うんですけど、大部分の人たちには「自分らしいやり方」や「別のやり方」を取り入れるチャンスが来ていると思います。

「変なことをやって失敗する人」と「新しいことをやって成功できる人」を分ける決定的な差伊藤羊一(いとう・よういち)
Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長
Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長/ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長/株式会社ウェイウェイ 代表取締役/グロービス経営大学院 客員教授
東京大学経済学部卒、1990年日本興業銀行入行、企業金融、債券流動化、企業再生支援などに従事。2003年プラスに転じ、ジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、マーケティング、事業再編・再生などを担当後、執行役員マーケティング本部長、ヴァイスプレジデントを歴任、経営と新規事業開発に携わる。2015年4月ヤフーに転じ、現在Zアカデミア学長、Yahoo!アカデミア学長としてZホールディングス、ヤフーの次世代リーダー開発を行う。またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてリーダー開発を行う。若い世代のアントレプレナーシップ醸成のために2021年4月より武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)学部を開設、学部長に就任。代表作『1分で話せ』は56万部を超えるベストセラーに。その他『0秒で動け』『1行書くだけ日記』『ブレイクセルフ』『FREE,FLAT,FUN』など。