100人中99人が同じ答えになるとき、違う答えを出す1人になる
平尾 この本は『起業家の思考法』というタイトルなんですけど、僕は「起業家ではなく、会社に勤めている方に読んで欲しい」と思って書いたんです。会社員の方々は、「別解力」を受け入れてくれると思いますか。
伊藤 僕がこの本を読んで第一印象で思ったのは、「案外、優秀なやり方を大切にしているんだな」ということです。
起業家の方って、「別のやり方」を強調する人が多いんですよ。
でも、会社員が培っている「優れたやり方」を否定せず、「成果を出す起業家との共通点」と示されているのは、すごく受け入れられると思いました。
あと、「優れたやり方」がダメだと思ったら、対極にある「自分らしいやり方」(A)ばかり考えちゃうんですよ。僕もそうだし、会社員の人もそうだと思います。
でも、この「別のやり方」という方向(C)があると示してもらえると、僕も「そっか!」と納得できたんです。そういう発想をしたことがなかったし、その方向は考えてこなかったなと思って。
多分、会社員は考えたことがないと思うんですよ。ひたすら「優秀なやり方」だけなので。「自分らしいやり方」も、自分を何十年も生きていれば、さすがに見えてくる。
そこに「別のやり方」があるというのは、新鮮な発見でした。このフレームで、わかりやすく理解して考えることができますよね。
真反対に振ってみるとか、具体的な手段は色々あるじゃないですか。一部は無意識にやっていることもあると思うんですけど、意識的に「別のやり方」をやることは、会社員はもちろん、仕事をするすべての人に必要だと思います。「別解力」を体系的に考えてみるのはすごく大事です。
平尾 学校の勉強もふくめ、「優れたやり方」にずっと慣れている方が多いと思います。80点は取れているので、「別のやり方」を少しだけ加えれば、簡単に突き抜けられるんです。
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。
伊藤 そうそうそう。ソフトバンクアカデミアで「みんなすげーこと言ってるな」と衝撃を受けるまで、30年以上「正解の旅」をしていたんです。
まずは「別のやり方」をガイドしてあげたほうが、いいかもしれません。新発見にもなりますし。
平尾 100人中99人が「優れたやり方」で同じ答えになるとき、一人だけ違う「別解」を出せると、すごい成果が生まれるんです。その破壊力を僕は知っていて、味を占めているだけなんですよ。油断すると僕も「優れたやり方」に行きやすいタイプなので。
ただ、「別のやり方」はちょっとしたコツというか、方法論があれば再現できます。
「正解」に進む人と「起業家」の差も、実は紙一重なんじゃないかと思ったんです。
伊藤 なるほど。「優れたやり方」を知りつつ「別のやり方」を取り入れると。
平尾 はい。しっかり成果を出している方は、「優れたやり方」を知った上で、「別のやり方」に向かっている気がします。
〈第3回へ続く〉