takramという21世紀的なクリエイティブファームが、デザインとエンジニアリングの融合を軸に実践しているさまざまな実務経験を通して作り上げてきた、イノベーション創造へのアプローチを紹介する。

 

「コンセプトの落とし穴」とは?

 複数人のチームでクリエイティブな仕事を進めていく上で見過ごされがちな、「コンセプトの落とし穴」とは? 仕事に置けるクリエイティビティを阻害するものは何か? 従来型のいわゆるコンセプト運用は、往々にして「変更不可能なマニフェスト」か「後付けのPRストーリー」となってしまう。「ものづくりとものがたり」の相互作用によって、その不都合をいかに解決するか。

 本連載では、東京を拠点に活動するクリエイティブイノベーションファーム、「takram design engineering。Takram」が、メーカ企業などとの製品開発プロジェクトを通して作り上げてきた、イノベーション創造にかかわる方法論やノウハウ、有効な手法などを紹介していく。

 まず最初に「ストーリー・ウィーヴィング」を紹介する。ストーリー・ウィーヴィングとは、「プロジェクトの初期に設定したコンセプトをその後も柔軟に練り直し続け、よりよいものに洗練させていく」手法である。連載前半は、ストーリー・ウィーヴィングの方法論についての概説。その後は、その他の手法、テクニックや視点を、実例を交えながら紹介していく。