蚊が媒介する「ジカ熱」とは?妊婦はとくに注意、性行為で感染もPhoto:PIXTA

 蚊は口に仕込んだ針をヒトの毛細血管に突き刺して血を吸う。その際、ヒトが痛みを感じないよう「麻酔成分」や血液が固まって吸血できなくなるのを防ぐ「抗凝固成分」を注入し続けている。それだけなら被害は「かゆみ」くらいで済むのだが、ついでに蚊の唾液中に潜む病原体もヒトの体内に送り込まれるのが厄介だ。

 蚊が病原体を媒介して発症する病気は「蚊媒介感染症」と総称され、深刻な被害をもたらすマラリアや日本脳炎が有名だ。近年はジカウイルス感染症(ジカ熱)やデング熱が増加し、世界的に警戒されている。

 このうちジカ熱は2015年以降、中南米を中心に東南アジア、西太平洋地域まで拡大している蚊媒介感染症だ。

 感染者のおよそ2割で発熱や結膜の充血、関節痛などの症状が出るが、ほとんどは軽症で済む。ただし妊婦が感染すると胎児も感染し、極めて小さな頭で生まれたり、生まれた後で頭の成長が止まったりする「小頭症」という障害を負う可能性が指摘されている。

 感染した男性から性行為を介して女性に感染した例も報告されており、ジカ熱の流行地域に滞在中、あるいは帰国後、最低でも6ヵ月間は性行為の際に正しくコンドームを装着するか、性行為そのものを控えることが推奨されている。特にパートナーが妊娠しているときは、赤ちゃんが生まれるまで性行為を控えたほうが無難だ。

 日本国内の主な媒介蚊はヒトスジシマカだ。感染者の血液を吸血した蚊がウイルスを次のヒトへと運ぶ。ヒトスジシマカは日中、主に明け方と夕暮れ時に活動するので、早朝散歩などで蚊が潜んでいそうな日陰のやぶや低木に近づく際は、長袖シャツ、長ズボン、防虫スプレーで防御するといい。

 蚊の活動時期(5月中旬~10月)は幼虫(ボウフラ)退治も徹底したい。蚊の発生源は水槽や古タイヤの溝、排水溝や雨水升などにできる「人工的な水たまり」だ。屋外に放置されたプラスチック容器や鉢植えの受け皿なども蚊の“ふ卵器”になる。

 庭やベランダ回りから雨水がたまりやすい容器を取り除き、梅雨前に側溝や排水溝は水が常に流れるよう掃除をしておこう。雨水升にはボウフラ退治用の殺虫剤を利用したい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)