
副知事室にもWi-Fiがなく、FAXが幅を利かせていた「超アナログ都庁」から、オンライン手続き82%達成までの劇的変化。ヤフー元会長の宮坂学東京都副知事が語る行政DX5年間の軌跡と、1100万都民のスマホに「都庁をお引越し」させる壮大な構想。従来のベンダー依存から脱却し、なぜ内製開発に転換するのか。「給料は激減したが、これ以上の仕事があるか」という熱い想いを聞いた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
「FAX現役」「Wi-Fiなき副知事室」から始まった変革の5年
「公務員と技術者が手を携えれば、魔法のような変化を起こすことができる」――ITの最前線から超アナログな公務員の世界に飛び込んで5年。宮坂学東京都副知事がそんな確信をつかむまでの道のりは、決して平坦ではなかった。
都庁や都内62区市町村のDXを推進する「GovTech(ガブテック)東京」が、初のテクノロジーカンファレンスを開催した。東京都副知事でありGovTech東京理事長でもある宮坂学氏が登壇し、行政DXの5年間を振り返る中で語ったのが、2025年2月にリリースした「東京都公式アプリ」の開発方針である。
宮坂氏が着任した当初の都庁では、前職のヤフーではもはや視界に入ることすらなかったFAXが幅を利かせ、本来メールで完結できることまでFAXや紙での出力が慣習となっていた。執務室は紙の資料が山積みで昭和の様相を呈し、16万人の都職員が働くオフィス環境も有線LANが主体で、副知事室にすらWi-Fiがなく、クラウドサービスとは無縁だった。
「こんなところでどうやって仕事をするんだ」と途方に暮れたという宮坂氏。これが、5年でどう変わったのか。