凶悪犯罪が絶えない昨今、企業のみならず、家庭におけるホームセキュリティの需要も急増しています。
月額数千円の契約でセンサーを設置してもらい、センサーが異常を感知すると警備員が駆けつけてくれるという、あれです。読者のなかにも「そろそろホームセキュリティを頼んでみようか」と検討している方は多いのではないでしょうか。
現在、警備産業の市場規模はすでに3兆5000億円に達しています。警備会社は全国に約9000社、警備員は交番勤務の警官を上回る約50万人もいます。
しかし、個人の財産や命を委ねる警備会社や、そこで働く警備員については、世間であまり知られていないのが実情です。「警備」という職業柄に加え、上場企業がわずか6社しかないため、情報開示が徹底されていないこともその背景にあるといえます。
そこで今週号の特集「驚きの警備産業」では、急成長する業界の内幕を徹底追跡しました。おそらく警備産業をここまで詳しく分析した特集は過去になかったでしょう。
特集では、まずセコム、綜合警備保障といった機械警備主力の最大手が市場を牛耳り、全体の9割を占める常駐・巡回警備主力の中小企業が残されたパイを奪い合うという業界の構図を紹介。
売上高上位の専業34社についてはアンケート調査を実施し、各社の平均的な契約料金、警備員に占めるアルバイト比率や定年再雇用者比率など、警備委託の際に気になるポイントを徹底比較しました。また、「誰でも簡単に警備員になれる」、「体力勝負の仕事のワリに警備員の高齢化や低賃金化が進んでいる」、「犯人との格闘で死傷する警備員はじつはごく稀」など、知られざる警備員の実態にもスポットを当てました。
ほかにも内容は盛りだくさん。現金輸送などの得意分野で大手を凌駕する「一芸に秀でた警備会社」の紹介、ホームセキュリティ低価格戦争の現場、刑務所・ロボット監視など広がる警備の裾野、天下りに象徴される警察と警備業界との癒着の闇など、業界の深淵に切り込みます。
機械警備が急速に普及しているとはいえ、実際に現場で警備に当たるのは今も変わらず「人間」です。屈強で冷静な警備員のイメージとはうらはらに、業界には意外なほど人間臭いドラマが転がっています。
この特集1つで、警備産業の「驚きの全貌」をあますところなくお伝えできるものと自負しています。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 小尾拓也)