2024年12月11日、日本生命保険が1兆2000億円を投じて米系生保のレゾリューションライフを買収すると明らかにした。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、買収に至った経緯とストラクチャーの中身、そして日生の清水博社長がこの買収に込めた二つの狙いについて詳述する。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
国内保険会社で最大の買収案件
日生が1兆2000億円で海外生保を買収
2024年12月11日、日本生命保険は、米国や欧州、豪州で既存の保険契約を買い取る事業を手掛ける、米系生保のレゾリューションライフを買収すると発表した。その買収額は約82億ドルで、日本円にして約1兆2000億円。19年にレゾリューションに初めて出資して以降、これまで約2200億円を投じてきたことから、合計で約1兆4200億円に上る巨額買収案件となる。
また、国内保険会社としては最大規模の買収案件となり、15年に約75億ドル(約9400億円。当時)を投じた東京海上ホールディングス(HD)による、米HCCインシュアランスHDの買収額を抜き去ることとなった。
日生は、23年11月に介護大手のニチイ学館を傘下に持つニチイホールディングスを約2100億円で買収した後、24年5月には、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)傘下のコアブリッジ・ファイナンシャルに約38億ドル(約6000億円)を出資し、発行済み株式の20%を取得している。
矢継ぎ早に海外の大型買収に踏み切った日生だが、これまで海外事業に関しては他社の後塵を拝してきた。
世界最大の保険市場である米国では、他社が数千億円規模の海外保険会社を買収してビジネスを拡大しているのに比べ、1991年に設立した子会社の米国日本生命が医療保険などを細々と販売しているのみ。米国では出遅れてきた。しかも日生の海外事業といえば、16年に約2000億円を投じて買収したオーストラリアの生保MLCだが、豪政府による規制強化によって長らく苦境に喘いでいる。
故に、これら合わせて2兆円近くになる巨額な海外買収案件に対しては、日生社内で疑問視する声も複数あった。そのさまと昨年後半に日生内部で検討していた資料の一部を明らかにしたのが、24年1月23日に保険ラボで配信した『日本生命が2100億円でニチイ買収、水面下で動いた「海外新規出資3.4兆円」の深層』だ。
拡大画像表示
「プロジェクトOcean」と「プロジェクトNikko」――。昨年、日生内部で海外買収案件を検討していた際に名付けられたコードネームだ。前者がコアブリッジで、後者がレゾリューションを指す。
保険ラボで報じて以降、さすがにプロジェクト名は変更されたが、その後も日生内部で買収に向けて検討が進められてきた。コアブリッジについては今年5月、レゾリューションについては、今回結実したというわけだ。
では、レゾリューション買収の中身とそこに込めた二つの狙いについて次ページで詳述していこう。