2年前、「来年はどんな年になるでしょうか?」と問われてタモリが答えた言葉に、みんながハッとしたことがありました。また「ガリガリ君」でおなじみの赤城乳業は、値上げなどネガティブなことを伝えるCM動画を公開した結果、「がんばれ」と逆に応援され、ファンが増えています。タモリとガリガリ君に共通する「言葉の力」とは?本記事では、こうした「あの人はすごい」と思われる人の“考え方”に迫ります。(電通 シニア・マーケティング・ディレクター 佐藤真木)
タモリ「新しい戦前」~みんなが言いたいことをズバッと代弁
12月後半、2024年もラストスパート。今年を総括し、来年を予想するような記事があちこちに上がっています。
約2年前、タレントのタモリが「来年はどんな年になるでしょうか?」という質問に「新しい戦前になるんじゃないでしょうか?」と答えました。この一言は、拡大し続けるウクライナ紛争のニュースを毎日のように見聞きしながら「遠くで起こっているこの紛争は、もしかしたら他人事ではないかもしれない」という、私たちの漠然とした不安感を見事に言い表しました。その後の世界情勢の不安定化は皆さんご存じの通りですが、タモリの「新しい戦前」という言葉は、紛争報道を見る私たちの視点を大きく変えることになりました。
このように、周囲の人がモヤモヤと感じていることを鮮やかな言葉で言い当てる人は、「頭のいい人」「本質を見抜ける人」として、周囲から重要視される存在になるものです。それは、ほとんどの人が自身の不安や欲望を明確な言葉として自覚できないから。漠然とした気持ちを明確な言葉にしたり、その不安や欲望を具体的な形として示してくれる人は非常に貴重な存在なのです。
人気のコンサルタントや占い師の多くは、相談者の表情や態度から「言ってほしい」と思っていることを察知し、即座に言語化する能力を持っています。そのため、彼らは感謝され、フォロワーが付き、ファンが生まれるのです。