「原口一博総務大臣の態度は、絵に描いたような『君子豹変』だ。これでNTT労働組合の献金問題で嫌味を言われることもなくなるだろう。ただ、わずか半年で180度の方向転換をしたのだから、NTTグループにとっては大変な誤算のはず。かなり慌てているらしい」――。
各方面を慮っているのではないかと疑いたくなるほど、新聞・テレビの主要メディアは報じようとしなかったが、原口総務大臣が3月9日の総務省3役会議で、光ファイバー網の全国整備を加速する「光の道構想」の早期取りまとめを指示したことが、賛否を巡って電気通信業界を二分する話題になっている。
原口大臣にとって、多くの民主党の主要閣僚と同様に、野党時代からNTT労働組合は有力支持母体のひとつだ。それゆえ、どちらかといえば、議論ばかりが盛り上がり、四半世紀あまりにわたって本質的な進展のみられなかったNTTグループの分離分割論議などには冷ややかな政治家とみられてきた。ところが、今回、突然、その一般的なイメージとは正反対のニュアンスの「NTTの経営形態」見直し論議を伴う「光の道構想」のとりまとめを指示したのだ。
喜びの色を隠せないのがソフトバンクだ。対するNTTは、努めて冷静を装っているように見受けられる。とはいえ、原口大臣が『基本的な方向性』を取りまとめる期限として指定した5月半ばへ向けて、電気通信行政から目が離せなくなりそうだ。
原口大臣がNTTの経営形態
再検討まで打ち出した事情
今回の「光の道構想」の叩き台は、昨年暮れ公表の総務省の成長戦略(「原口ビジョン」)だ。同ビジョンは、2020年に全国の4900万世帯でブロードバンドサービスを利用できるようにして、それ以降、年率約3%という高いレベルで持続的な経済成長を実現しようという目標を掲げていた。
原口大臣が3役会議に出した指示では、この目標年次を5年前倒して2015年とし、生産性の向上ペースをさらに速めようという点が新しい。
そして、具体策として、(1)「光の道」の整備のため、NTTの経営形態の見直しも含めて、光ファイバーのアクセス網の整備施策を洗い直す、(2)「光の道」へのアクセス権という概念を新たに打ち出し、これを国民に保証するため、従来は固定の電話だったユニバーサルサービス(僻地であっても必ず提供するサービス)の対象や、確保方策(1番号当たり8円を利用者に負担してもらっているユニバーサルファンドが従来の基本方策)を再検討する、(3)「豊かな社会」を実現するため、ICT(情報通信技術)の利活用促進の一括法案を提言する――など3点を早急に検討することを指示した。この3点を、「光の道整備3法」としてパッケージの法整備を目指す案もあるという。