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BIG THINK presents[緊急特集]金融危機後の世界経済

ノーベル経済学者マートン教授「世界は金融危機で50兆ドルの富を失う」(テキスト版)

【第8回】 2008年11月20日
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金融危機は世界経済にどれくらいの損害を与えているのか。金融工学の権威で、ノーベル経済学者(1997年)のロバート・マートン ハーバード大学教授は、時価評価されていない非公開の部分も勘定に入れれば、50兆ドル(5000兆円)に拡大する可能性もあると示唆する。

マートン:議論を組み立てていくなかで、米国においても世界においても、多くの富が現実に失われているということを認識することが大切であると私は思います。それも、誰かが利益を得ることで相殺されるような損失ではありません。金融市場で見られる多くの取引、たとえば先物取引などでは、損失を被る者がいれば利益を得る者がいて、システムとしては差し引きゼロになります。しかし、誰も利益を得ない損失、一方通行の損失もあります。

 ここで引き合いに出せる最大のものが、そう、今回の住宅関連の損失です。米国では4兆ドルもの損失が出たように思われます。1ヶ月ほど前にあるパネルディスカッションで私がこれを口にしたとき、人々は私が数字を誇張していると思っていました。しかし今になって見れば、これでも控えめだと思われるでしょう。

 正確な数字がどうであれ、非常に大きな損失です。昨日の時点で、株式市場では恐らく9兆ドル、8兆から9兆ドルの価値が失われています。この二つを合計すると12~13兆ドル、我が国のGDPのおよそ85%に当たります。これだけの価値が失われてしまったのでです。

 そのうちどれだけを取り戻せるかは今後の問題ですが、しかし現時点では失われてしまっている。富にこれだけ多くの打撃が生じた場合、経済への影響、将来の出来事への影響は、ちょっとした変化どころのものでは済みません。どのようなソリューションに辿り着くかはともかく、また全体としてどのような事態が起きるかはともかく、これだけの損失が生じるということ、そしてそれに対処しなければならないということを認めることが常に重要なのです。

 私が言っていることはおかしいですかね。たぶん、ジョージ(ソロス氏)やラリー(サマーズ氏)の方が正確な数字を知っているでしょう。飛行機である尊敬すべき人物と一緒になったのですが、彼は、時価評価されていない非公開の部分なども勘定に入れれば、世界全体で実に50兆ドルもの価値が失われた可能性があると言っていました。この数字が正確かどうかは私には分かりませんが、しかし明らかに……。

パネリストの一人:非常に大きな数字ですね。

マートン:明らかに、不動産部門の損失は、グローバル規模でも、少なくとも米国と同じくらい大きなものになろうとしています。株式も、合計すれば米国での損失と同じくらい大きくなるでしょう。つまり株式市場での損失は、グローバル規模で、最大30兆ドルに達する可能性があります。

・動画版はこちらをご覧ください。

ロバート・マートン(Robert Merton)
アメリカの経済学者。マイロン・ショールズとフィッシャー・ブラックが開発したオプション価格公式の数学的証明で1997年にノーベル経済学賞を受賞。長年、MITで教鞭を取った後、1988年にハーバードビジネススクール教授に就任、現在に至る。

Big Thinkとは?
ハーバード大学出身のピーター・ホプキンス氏が2008年1月に、ローレンス・サマーズ元米国財務長官らの協力を得て、立ち上げた“知識人”のための討論サイト。著名人の動画インタビューを中心に、政治から経済、科学、文化など幅広いテーマを取り扱っている。ダイヤモンド・オンラインでは今後、Big Thinkのコンテンツを動画とテキストで定期的に掲載する。

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