大妻女子大学名誉教授の大森正司氏によると「緑茶にはビタミンCやE、食物繊維、コエンザイムQ10など多くの栄養素が含まれているが、茶葉から溶け出す栄養素はおよそ1割」という。すべての栄養を余すことなく摂取できる、スーパーで買える「最強の製品」とは?ジャーナリストの笹井恵里子さんが聞いた。(大妻女子大学名誉教授 大森正司、ジャーナリスト 笹井恵里子)

緑茶には
ストレス軽減効果がある

大妻女子大学名誉教授の大森正司氏(笹井撮影)大妻女子大学名誉教授の大森正司氏(笹井撮影)

 前回、緑茶の三大健康成分は「カテキン」「カフェイン」「アミノ酸」であると述べました。そして三つの中で感染症や糖尿病の予防、また血圧上昇抑制作用などたくさんの健康効果がある「カテキン」と、眠気を防いで脳の働きを活発にし、脂肪燃焼作用のある「カフェイン」は、急須に茶葉を入れて熱湯を注ぐと増加するとも説明しましたね。

 今回は三大健康成分のうちの「アミノ酸」(うまみ成分)について最初にお話ししましょう。

 緑茶には覚醒作用があるカフェインが含まれているにもかかわらず、飲むとどこかほっとしますね。それは気分の問題だけでなく、アミノ酸によるリラックス効果が大きいのです。緑茶には20種類以上のアミノ酸が含まれ、このアミノ酸類全体の量の5~6割を占めるのがテアニン。

 テアニンを摂取して脳波を測定すると、摂取してから40分以降にリラックスしている時に出現する「α波」が認められたと報告されています(静岡県立大学名誉教授の横越英彦氏らの研究)。その後もさまざまな研究によって、テアニンを取るとリラックスやストレス軽減効果があることがわかっています。ですから就寝前にテアニンたっぷりの緑茶を飲めば、いい睡眠につながるのです。

 緑茶の覚醒作用があるカフェイン、そしてカテキンを増やさずに、テアニンたっぷりの緑茶を淹(い)れるとっておきの方法を紹介しましょう。

 急須でお茶を淹れる場合、通常1人分の茶葉は2~3グラム(ティースプーン約1杯)の使用です。これをちょっとぜいたくに10グラム(ティースプーン約5杯)の茶葉を急須に入れてください。そこに冷蔵庫で冷やした湯飲み茶碗1杯分の水を注ぎ、待つこと15分ほどすると、テアニンたっぷりの水出し緑茶のできあがり。

飲んでみると、口の中にフワーッと良い香りが広がり、苦みを感じません。カテキンやカフェインはそれぞれ、渋みと苦みに関わっているので、それらが抽出されないために甘みが凝縮されるのです。

カテキンやカフェインも
摂取したい場合は

 そしてアミノ酸が凝縮した「水出し緑茶」をいただいた後、その茶殻に40~50度の湯を注いで1分待つと「渋み」(カテキン)が加わった味を楽しむことができます。残った茶殻にさらに熱湯を注ぐと、今度は「苦み」(カフェイン)が加わった違った味わいになりますよ。

 同じ茶葉を使っても、熱湯で淹れれば熱に溶けやすいカテキンやカフェインが抽出され、水ならこの二つが溶け出さずにアミノ酸(テアニン)が中心の緑茶になるということです。

 また熱湯か水かといった湯温だけでなく、番茶(三番茶)にはカテキンが、新茶(一番茶)にはテアニンが多く含まれます。緑茶を飲む時の気分や求める健康効果によって種類や湯温を使い分けてください。

緑茶には三大健康成分以外にも
実は多くの栄養素が含まれている

 改めて緑茶に含まれる三大成分の健康効果を整理すると、下記のようになります。

「カテキン」――感染症や食中毒予防、虫歯や口臭予防、血圧・血糖値降下、肥満予防
「カフェイン」――覚醒、脂肪燃焼作用
「テアニン(アミノ酸)」――リラックス、ストレス軽減

 実はほかにも、緑茶にはビタミンCやE、食物繊維など多くの栄養素が含まれています。しかし急須で二煎、三煎しても、茶葉から溶け出す栄養素はおよそ1割。残りの約9割の成分は茶殻に残っています。