三菱商事が商社王者の陥落危機に立たされている。その引き金となるのが、三菱商事が政府公募のコンペ第1弾で総取りした3海域の洋上風力発電プロジェクトだ。運転開始よりもはるか手前の段階で、円安、資材高、工程遅延の“トリプルパンチ”によって巨額減損の瀬戸際にある。巨額減損の危機を招いた背景には、三菱商事の三つの誤算が存在する。特集『洋上風力クライシス』の#1では、三菱商事の三つの誤算に加え、エネルギー業界関係者の間でうわさされる巨額減損の規模も明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
三菱商事が第1ラウンド撤退!?
師走に駆け巡った未確認情報
「三菱商事が第1ラウンドのプロジェクトから撤退する」
政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ第1弾(以下、第1ラウンド)は2021年12月24日、三菱商事の圧倒的な価格破壊による“全勝”で幕を閉じた。あれから約3年。同じく師走に驚天動地のそうしたうわさが、エネルギー業界関係者の間を駆け巡った。
火のない所に煙は立たない。そんな情報が飛び出すほど、実のところ、三菱商事が手掛ける洋上風力発電プロジェクトは厳しい状況に追い込まれている。
第1ラウンドで華々しい大勝利を収めた三菱商事はその3カ月後の22年2月24日、いきなり悲劇に見舞われた。ロシアがウクライナに侵攻する「ウクライナ危機」が勃発したのだ。
ロシアのウクライナ侵攻によって、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発したサプライチェーンの混乱に、さらに拍車が掛かった。それに伴い資材高が進み、さらに急速な円安が重なってプロジェクトの採算が大きく狂った。
それだけではない。三菱商事はプロジェクトを進めていく中で、「三つの誤算」に直面している。大きな外部環境の変化と三つの誤算は、三菱商事を巨額減損の危機に追い込むこととなった。
次ページでは、三菱商事が見誤った洋上風力発電プロジェクト「三つの誤算」の正体を解き明かす。そして、エネルギー業界関係者の間でまことしやかにささやかれる、三菱商事が抱える洋上風力発電プロジェクトの巨額損失の規模も、ある前提を基にはじき出した。それは、三菱商事が商社王者から陥落するだけでなく、一気に業界3位まで滑り落ちるほどの衝撃的な額である。いったいその額とは。