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問い合わせ殺到の「人民元預金」
“持ち出し制限”の落とし穴

週刊ダイヤモンド編集部
2010年6月7日
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 人民元切り上げ観測で、「人民元預金」への関心が高まっている。

 現在、日本において個人向けの人民元預金サービスを行っているのは2行。中國銀行(バンク・オブ・チャイナ)とHSBCである。中國銀行では日本国内の支店で人民元建て預金が可能だが、この2ヵ月で口座開設や問い合わせが急増。HSBCは5月27日、預かり資産額1000万円以上の富裕者層向けに中国内の支店への口座開設無料サポートを開始し、こちらも予想を上回る反響だという。

 人民元預金の人気を支えるのは、高金利と為替差益への期待だろう。だがそのメリットも含めて、十分に理解されているとは言いがたい。

 まずは金利である。中国本土の銀行における定期預金金利は約2~4%。HSBCの人民元預金でも、1年定期で2・25%(5月末時点)と、日本よりはずいぶん高い。一方で中國銀行の場合、開設されるのはあくまで日本国内の支店での口座のため、利率は0・5%以下で一般的な邦銀と大差ない。

 もう一つが、人民元切り上げを見越した為替差益への期待だ。だが、切り上げは対ドルでの話であり、ドル円の動向によっては、対人民元の日本円相場は円高になる可能性もある。差益を得られるとは限らない。

 加えて、人民元預金には特有のリスクが存在する。「為替差益や金利のメリットがあっても、それを中国外に持ち出すのは簡単ではない」(香港在住の資産運用コンサルタント、木津英隆氏)のだ。

 中国政府の通貨管理は厳しく、原則として非居住者による人民元から外貨への両替は困難だ。HSBCの場合は「銀聯カード」を使うことで、人民元預金を日本を含む中国国外のATMから外貨で引き出し可能だが、年2万米ドル相当までに制限されている。ちなみに口座開設自体は日本国内でできるが、カードの暗証番号の受け取りは現地まで出向かねばならない。中國銀行は日本国内の口座のため、外貨への両替についての制約は少ないものの、取引は窓口のみだ。

 なお両行以外で、中国本土の銀行での口座開設・カード発行を代行する業者も急増中だが、数万円の開設手数料に加え、両替時にも手数料がかかる。

 中国政府の政策変更リスクもつきまとう。非居住者の預金やカードの扱いについて、新たな制約が課されることもありうる。

 そもそも中国政府は、人民元切り上げに踏み切っても上昇を小幅にとどめる可能性が高い。飛びつく前に、メリットがリスクとコストに見合うかどうか慎重に考えるべきだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)

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