NISAのイメージ画像写真はイメージです Photo:PIXTA

金融庁が高齢者向けの少額投資非課税制度(NISA)を創設する検討に入った。老後資金に目をつけた政府の意図はどこにあるのか。「高齢者向けNISA」で損をしない方法を考えると、そもそも政府の目論見が無駄骨に終わりそうな予感がしてきた。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

なぜ高齢者は投資をしないのか?

 金融庁が高齢者向けのNISA制度を創設する検討に入りました。背景を説明します。

 日銀によれば直近でも家計の金融資産のうち51%が現預金です。株式や投資信託の比率は20%に過ぎません。もっとも新NISAがはじまる前の2023年3月末では株や投資信託の比率は15%でしたから、新NISAで預金から投資への流れができたことは間違いありません。

 一方でなぜまだ金融資産の半分が預金なのかというと、新NISAに積極的なのは若者が中心で、高齢者にはそれほど浸透していないという実態があります。

 私の周囲には実際に銀行に1億円超を定期預金で預けている高齢の知人がいます。その人にとって重要なことは減らないことです。本人によれば、「100歳まで生きたとしてもあと30年間。毎年300万円ずつ取り崩していって、それで人生おしまいでちょうどいいのよ」ということで、確かにそれは理屈です。

 銀行の定期預金金利は上がり始めたとはいえ年利0.4%ですから、1億円の金利は40万円にしかなりません。経済の専門家は、あまりお勧めしないでしょう。

 一方で投資信託のうち高齢者向けの野村世界6資産分散投信の分配コース(外貨と円貨それぞれ債権、株式、不動産に投資)なら過去5年間の運用実績は年利回りで6%。つまり利益が年600万円だと考えれば、仮に毎年300万円ずつ取り崩していったとしても100歳で死ぬときには遺産は1億円よりも増えている計算です。