
トランプ政権が関税政策で朝令暮改を繰り返し、株価が乱高下を繰り返す中、円相場は円高傾向を継続している。今後も不透明な材料が少なくない状況下で円相場はどうなるか。エキスパート6人に行方を分析してもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
円安是正が関税巡る交渉の
議題になるとの見方で円高進行
4月16日のニューヨーク市場では円高が進行し、一時2024年9月以来の1ドル=141円台をつけた。
米トランプ大統領自らが出席を表明した関税を巡る日米交渉の場で、米国の対日貿易赤字解消に向けた円安の是正が取り上げられるとの見方から、円が上昇した形だ。実際には16日の交渉では為替問題は取り上げられなかった。
もともと、円はドルに対して、年明け以降上値を切り上げてきた。日本銀行が物価動向をにらみながらの利上げ姿勢を続ける一方、トランプ政権による一連の関税賦課の発表、発動などを受けて米国の景気減速懸念が高まり、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げの加速見通しが強まったからだ。
日米金利差が縮小するとの観測を受け、為替相場はドル安円高方向に動き、2月下旬に1ドル=150円を割った。
4月2日のトランプ政権の相互関税発表前あたりから、世界経済へのダメージを懸念し、金融市場はリスクオフ(リスクを嫌う状況)が高まり、4月9日の相互関税発動でリスクオフはピークとなった。
リスクオフの状況になると、経常黒字国である円が買われるのは為替市場の定石だ。4月10日には、円相場は140円台前半に突入した。
相互関税発動の90日間の猶予に踏み切ったことで市場のリスクオフのムードは収まったが、上のグラフに見るようにドル安円高基調は変わっていない。
一連の関税発動による米国経済の減速懸念は収まっていない上に、冒頭に触れたように関税交渉の場で円安是正が取り上げられるとの見方から、円への上昇圧力は緩和していない。
トランプ関税の行方、日米の金融政策、景気動向などの要因が絡み合う為替相場。今回、ダイヤモンド編集部では6人のエキスパートに、トランプ関税の行く末、円の対ドルレートの見通し、その背景にある日米の金融政策について聞いた。
次ページでは、6人の見方を紹介するとともに、円相場の行方を分析する。