日米問わず一流の会計学者は
IFRS強制適用に反対
おおた やすひろ/1992年慶應義塾大学経済学部卒業、97年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、同年同研究科特別研究員、2002年ニューヨーク州立大学バッファロー校スクール・オブ・マネジメント博士課程修了、03年同州立大学より経営学博士(Ph.D.)取得。03年ヨーク大学ジョゼフ・E・アトキンソン教養・専門研究学部管理研究学科助教授(会計分野コーディネーター)、05年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授、07年 准教授
最近、IFRSが注目を集めている。IFRSは、国際財務報告基準の略で、ロンドンにある国際会計基準審議会(IASB)が設定している世界統一会計基準である。
今まで、企業の財務諸表は、国ごとに異なった会計基準によって作成されていたため、外国の財務諸表を理解するためには、その国の会計基準の知識が必要だった。IFRSは、国際的に会計基準を統一することで、よその国の財務諸表を理解しやすくしようというのである。
世間の論調を見ていると、日本がIFRSを丸呑み(アドプション)して、すべての上場企業にIFRSを強制適用するのは、既定路線のように感じられるだろう。しかし、厳密には、それはまだ決定事項ではない。IFRSを強制適用するかどうかについては、2012年に金融庁が判断することになっている。一方、アメリカの証券取引委員会(SEC)は、IFRSを強制適用するかどうかを2011年に決定する。結果として、日本がIFRSを強制適用するかどうかは、アメリカの決定によって、事実上、決まってしまうだろう。
アメリカがIFRSを強制適用するかどうかは、アメリカがどれくらいIFRS設定プロセスをコントロールできるかによって決まるにちがいない。IFRSが、アメリカ主導で決定されるなら、アメリカ基準も国際基準も似たようなものだからである。アメリカが、IFRSを採用するかどうかは、IASBにとっても決定的に重要なので、アメリカの影響力を増やすように、IASBはかなりの譲歩をすることが予想できる。