11月3日、FRB(米連邦準備制度理事会)が、2011年半ばまでに、6000億ドルの国債を追加で買い入れる方針を表明し、さらなる金融緩和に踏み出した。短期の政策金利であるFFレートは、実質的にはすでにゼロ。金利に下げる余地がないため打ち出した量的緩和政策である。

米国の金融緩和による日米金利差の縮小で、この数ヵ月間、急速に進んできた円高は、さらに進むのか。先ほど『世界国債暴落』(東洋経済新報社)を出版したばかりの、みずほ証券・高田創金融市場調査部長(チーフストラテジスト)が今回の金融緩和政策の影響を語る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

米欧で依然として続く
バランスシート調整

米FRBが追加の金融緩和策を発表<br />一時的な円高・ドル安の修正はあり得るが、<br />歴史的な円高局面の到来は不可避<br />―みずほ証券金融市場調査部長 高田創氏―たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年6月より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。

 FRBは米国債の追加購入を、毎月750億ドルペースで2011年6月まで続ける量的緩和政策をFOMC(連邦公開市場委員会)で決定したが、おおむね市場の予想範囲、やや低めの水準の結果だった。その結果、30年債の金利は大幅な上昇になった。

 結論から言えば、今回の金融緩和によって、緩和がファクトとして出てきたので、11月中くらいは、これまでの急速なドル安から、一時的な揺り戻しは十分あり得る。だたし、いずれ年末から来年にかけて、歴史的な円高は不可避ではないかと見ている。

 結局、2007年以降、アメリカも欧州も、金融機関、企業、家計のバランスシート調整が続いているということだ。バランスシート調整の前には、バブルという資産価格の上昇があって、それが反落して調整に入るが、日本は1990年以降、「失われた10年」と言われたように、調整が済むまでに10~15年もかかった。