和才博美
NTTコミュニケーションズ
和才博美社長
Photo by Taku Ishikawa

 ひとこと言っておきたい。

 2005年6月以降、私がこの会社の経営を引き継ぐに当たって、前社長の鈴木正誠さんに「この点はこう変えたい」と具体的に申し上げたところ、「全部、お前に任せる」という反応が返ってきた。

 その後も、事業に関して私から相談を持ちかけることはあっても、鈴木さんから「こうしろ、ああしろ」というのはなく、妙な干渉もない。また、「もう任せたのだから、オレが出る必要はない」と一貫している。同じ会社の先輩とはいえ、立派な人間だと思う。

 たとえば、米ベリオ社の買収にまつわる話にしても──私自身は直接かかわっていないが──01年にITバブルが弾けてしまったことで、ベリオ社を立て直すために大規模なリストラをしなくてはならなくなった。鈴木さんの時代は、そのことにかなりの比重がかかってしまい、国内事業への目配りが手薄になってしまっていた。

 端的に言えば、個人個人のミッションを明確にさせて、「できたら評価してあげる」というやり方は、自分のミッションを考えさせるという趣旨自体、悪くないと思う。