
『アンパンマン』の作者・やなせたかしの妻をモデルにした朝ドラこと連続テレビ小説『あんぱん』(NHK)が好評である。脚本を手掛ける中園ミホは、『Doctor-X 外科医・大門未知子』などのヒットメーカー。朝ドラの執筆は『花子とアン』(2014年度前期)に次いで2作目となる。今回『アンパンマン』ややなせたかしを題材にした『あんぱん』は、中園にとって不思議な運命に導かれたような作品であった。運命にはふたつある。ひとつはやなせたかしとの関わり。そして、もうひとつは――。中園ミホの人生を変えた出来事と『あんぱん』への並々ならぬ取り組みについて聞いた。(聞き手・構成/ライター 木俣 冬)
小学生の時、やなせたかしに
ファンレターを送った
中園は小学校4年生のときやなせたかしと文通していたという。
「小学校2年生の時、やなせさんの詩集『愛する歌』を読んで、やなせさんにファンレターを送ったことをきっかけに文通がはじまりました。実際お目にかかることもあって、とてもよくしていただいたのですが、私が大人になるにつれ疎遠になってしまって。
19歳の時、一度、道で偶然再会したもののそれっきり。お世話になったのだから、脚本家になったときにでもご連絡すればいいのに、仕事とシングルでの子育てに精一杯でご無礼をしたままやなせさんは亡くなりました。
ただここ数年、やなせさんのことを考えるようになっていたんです。というのも、なんだか今の世の中、不穏じゃないですか。もし、やなせさんが生きていらしたら、この世の中を見てなんておっしゃるだろうと無性に考えるようになって。そしたら、朝ドラを書きませんかというお話が来たんです。
やなせさんのことを書きたいと言ったら、制作統括の倉崎憲チーフプロデューサーもちょうど同じくやなせ夫妻を題材にしたいと思っていたという偶然によって、『あんぱん』の企画が動き出しました。
やなせ夫妻を題材にするのでなかったら、朝ドラを書くのはとても大変なのでもう一度やろうとは思わなかったかもしれません。はじめての朝ドラ『花子とアン』(14年度前期)は本当に大変だったんですよ(笑)」