
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第22回(2025年4月29日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
寛(竹野内豊)から学びたい
「理想的な大人の対応力」
「絵を描いて生きていきたい」
自分の本心をようやく言語化できた嵩(北村匠海)。
それを立ち聞きしていた寛(竹野内豊)は、頭ごなしに否定せず、どうしたらいいか嵩といっしょに考えようとする。
現実的でない夢に折り合いをつける方法。絵を仕事にできる方法をいくつか、挙げてみる。
そんな話をしながら寛は美術系の学校に行くといいとゆるすのだ。
寛の言動に学びたい、理想的な大人の対応力。整理してみよう。
1.頭ごなしに反対はしない
これをやったら最悪である。否定しないことが大事である。若者よりも長く生きている分、経験も積んでいて、知識もある。だからつい、自分の経験則からものごとを語ってしまうが、それがすべてではない。漫画を描いて大成する人は一握りだから挫折して傷つかないように、若者のためを思ったとしても否定はいけない。まずは、相手の気持ちに傾聴する。
2.簡単に賛成はしない
かといって、絵を描いて生きることは容易なことではない。だから、やりたいことをやればいいと無責任に言うのも残酷である。「適当なことを言う人」と評判を落とす危険性もある。
3.「『かもしれん』に人生をかける覚悟はできちょるか」
やりたいことをやるためにどうしたらいいか一緒に考える。寛は可能性に人生をかける覚悟を問う。絵を描く仕事の肯定でも否定でもない。成功しても失敗しても自分がその道を選んだことを後悔しないことの大切さを語るのだ。
ここで最も重要なのは、大人側の利害を持ち込まないことだ。寛の場合、嵩が医者にならないと、自分の家、医者という家業を継ぐ者がいなくなる。だが、彼はすでにそれは気にしないでいいと宣言しているのだ。相談に乗るなら、常に相手のためになることを考えること。