
日本独自の「ガラ軽」市場も蹂躙されてしまうのか――。世界を席巻する中国の自動車メーカー・BYDが、日本の「軽自動車」セグメントに本格参入を表明。しかも、その軽EVは“低め”に推定しても価格と性能で国産首位の日産「サクラ」を凌ぐ可能性が高いようです。これまで日本市場では苦戦してきたBYDですが、なぜ今「軽EV」で勝負を挑むのでしょうか。価格、航続距離、バッテリー技術…日本車との違いを徹底比較した結果、見えてきた圧倒的な性能差とは。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
BYDの軽自動車参入
日本メーカー、大丈夫?
中国の自動車最大手になったBYDが2026年末までに日本市場に軽自動車を投入することを発表しました。
「中国車でしょう?まあ売れないよ」
「信頼性や耐久性が心配だしね」
「そもそもEVが日本では売れないのを知らないんだろうね」
というのがこれまでの日本でのBYDの評判でした。この状況が変化することになるのでしょうか。日本の自動車市場は、来年出現することになる安価な中国車にどう翻弄されることになるのでしょうか。記事にまとめてみます。
ちょうど1カ月前のダイヤモンドオンラインにBYDの2024年12月期決算についての記事を書きました。売上高が前年比26%増の7770億元(約16.1兆円)で、ライバルであるアメリカのテスラの977億ドル(約14.7兆円)を上回りました。日本車メーカーでは日産(今期売上予想12.5兆円)を上回り、ホンダ(同21.6兆円)超えも視野に入ってきました。
そのBYDも日本市場参入には予想通り苦戦しています。世界販売台数が427万台であるにもかかわらず、2024年の日本での販売台数は2223台に過ぎません。これまでは中国車の評判を覆すべく高級車戦略を取り、SUVやスポーツセダン、今年はプラグインハイブリッドの高級車投入と日本市場では高価格セグメントでの展開を主戦場としてきました。
一方で、あえて中国市場で売れている小型車の投入を自制してきたのがこれまでのBYDでした。今回のニュースはその戦略の大転換と言えるでしょう。