ピアンタ
ホンダの小型耕運機「ピアンタ」は家庭用のカセットガスボンベ1本で1時間稼動し、約32坪の耕運作業が可能だ。

  「これほど売れるとは思わなかった。正直言って、本当に売れるのかとドキドキしていました」と語るのは、ホンダのガスボンベ式の小型耕運機「ピアンタ」開発チームで汎用営業部所属の安井真氏である。

 安井氏が驚くのも無理はない。開発メンバーさえも“恐る恐る”の状態で3月3日に売り出したピアンタは4月16日時点までに、既に4000台以上を売り上げた。なんと年間販売台数6000台の半数を軽く突破するほどの好調な売れ行きなのである。試しに首都圏のホームセンターを覗くと、売り切れの店さえあった。「ピアンタ」投入で、ホンダの小型耕耘機の3月度販売台数は前年比32%増の11554台となった。

 なぜ、ピアンタはそれほどまでに注目を集めたのだろうか。

 テレビCMなどで周知の通り、ピアンタの最大の特徴は家庭用のカセットガスボンベを燃料にした点にある。

 従来のガソリンに比べれば、購入や燃料の充填、保管などの取り扱いが容易で、手を汚すこともない。加えて、本体を持ち上げることなく脱着が可能なキャリーボックスと移動用の車輪一体型スタンドが標準装備され、移動や収納が容易という点もある。ボンベ1本で約1時間稼働し、約32坪の耕運作業が可能だ。

 もともと小型耕運機の使用頻度が集中するのは、2月~5月連休前後まで。家庭菜園向けでは、春に使ってしまえば、翌年春までまったく使わない事例が多く、残ったガソリンを抜き取るなどの作業も必要で、取り扱いが面倒だった。

 そのせいか、従来の小型耕運機の購入層は50~60歳代の男性が中心で、購入者の約半数がエントリーユーザーであった。だが、ピアンタの場合、手軽に使えるという特徴により、約90%がエントリーユーザーだ。これまで耕耘機を購入しなかった20~40歳代の女性や夫婦も1割以上を占める。また、従来のユーザーは戸建て住宅に住む人が中心だったが、「ピアンタ購入者には都市部のマンション住まいの人も多い」(安井氏)。

 ピアンタ本体の色は、創業者の本田宗一郎がこだわったホンダ製耕運機の定番色の赤ではなく、汚れやすい耕運機では“禁断色”とされる白をあえて採用するというギャンブルにも打って出た。安井氏は「結果的には、丸みを帯びたデザインにもマッチして、若い女性にはウケた」と自己分析する。