
備蓄米が緊急放出された裏で、定温倉庫業者が倒産・廃業の危機に陥っている。混乱する現場と倉庫経営に何が起きているのか。「支援金を要請せざるを得ない」と主張する理由とは。(カーゴニュース発)
小泉進次郎農相の備蓄米放出で
定温倉庫業者が倒産・廃業の危機
自民党の物流倉庫振興推進議員連盟(会長=浜田靖一衆議院議員)は5月29日、自民党本部で第22回総会を開催した。日本倉庫協会(日倉協、藤倉正夫会長)、日本冷蔵倉庫協会(日冷倉協、浜田晋吾会長)、全国定温倉庫協同組合(定倉協、太宰榮一理事長)の倉庫業界3団体が出席し、業界の要望を伝えた。
定倉協の太宰理事長は「本来は4~5年の備蓄保管を前提に2024年産のコメを入庫受け入れしているが、3月に政治的な判断で急遽放出が決定した。速やかに必死に大量出庫に対応しているものの、物流の一般原則である“先入れ先出し”に反して24年産から出荷する異例の“後入れ先出し”作業が現場に混乱をもたらしている」と報告。
加えて「緊急出庫により全国約34万平米以上の冷却機能付き備蓄用定温倉庫が空っぽになるが、何ら逸失保管料の補償がない。補償がなければ経営危機に見舞われ、金融機関に納得してもらう説明もできない。万一、買戻し政策が撤廃され、将来的な逸失利益も確定した場合には、せめて緊急出庫時点から25年度末までの“荷待ち経費”相当額を支出していただきたい」と危機的な状況を説明。
「政治判断によって備蓄米の緊急放出を実施したのなら、しわ寄せが来ている倉庫業界の窮状を責任ある政治判断で救済していただきたい。このままでは多くの定温倉庫業者が倒産・廃業することになりかねない」と強く訴えた。