昨年末、保険業界に激震が走った。損害保険業界2位の三井住友海上グループホールディングスと4位のあいおい損害保険、6位のニッセイ同和損害保険の3社が今秋にも経営統合する意向であることが明らかになったためだ。

 3社の統合が実現すれば、正味収入保険料(一般企業の売上高に相当)は約2.7兆円となり、業界トップの東京海上ホールディングスの約2.2兆円を大きく上回る“メガ損保”が誕生し、業界地図は大きく塗り替わる。

 損保業界では、2001年の再編後もさらなる再編のうわさが絶えなかった。主力の自動車保険や火災保険が伸びないのに加え、一連の金融危機によって財務基盤も揺らいでおり、規模の拡大と効率化のための再編は避けられないと見られていたためだ。

 布石はあった。昨年春の三井住友海上の持ち株会社化である。合併を伴わない持ち株会社化は「何のためにするのか」と言われていたが、水面下で虎視眈々とチャンスをうかがっていたわけだ。

 今回統合予定の三井住友海上とあいおいは、共にトヨタ自動車に強いという共通項があるが、意外だったのはニッセイ同和。大株主の日本生命保険が、業績の伸び悩みに業を煮やして統合話に乗ったとの見方が大半だが、「中国に力を入れたい三井住友海上と、中国で一定程度のビジネスを展開している日生が手を組んだ」(関係者)との見方もある。

 なにより今後注目されるのは、東京海上と損保ジャパンの動向だ。とりわけ海外でのM&Aに積極的なあまり、国内で足をすくわれた業界の盟主、東京海上は黙っていられまい。損保ジャパンも持ち株会社化するとの観測もあり再編に意欲的と見られる。

 標的になるのは日本興亜損害保険である。すでに動きもある。日本興亜の大株主である米投資ファンドが昨夏に損保ジャパン株を買い増しており、また、東京海上の系列銀行である三菱UFJフィナンシャル・グループは昨秋に日本興亜株を取得した。スケールメリットがものを言う世界だけに、必死の争奪戦となるだろう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 藤田章夫)