
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第27回(2025年5月6日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
うさ子ちゃん(志田彩良)
さては要領の良い子?
のぶ(今田美桜)は学校で高知県主催の体育大会の告知を見つけ、黒井(瀧内公美)に相談する。理由を問われ「走りたいきです」「ただ走りたいがです」とだけ言うと、だったら「そのへんの野原を走ってなさい」とつれなくされた。うさ子(志田彩良)には黒井の精神に倣わないと通るものも通らないと注意を受ける。
この場での最適解は「女子師範学校の名誉のため」「忠君愛国」のためであるとうさ子はわきまえている。でものぶはそんなことを言いたくない。自分の心のまま、ただ走りたいだけだから。
このふたりの会話を見て思うのが、うさ子は完全に黒井に洗脳されてしまったわけではなさそうだということ。学校でうまくやっていくために黒井の言うことを聞いている、要領のいい人なのではないかということだ。
うさ子はもともと女学校を卒業したらどこかに嫁ぐつもりだったが、のぶが師範学校に進学すると聞いて影響されて進学することにした。後追いでも合格できるくらいの要領の良さをもともと持っている。師範学校でも郷に入っては郷に従えとばかりに、黒井の言うことを聞いているのだと思う。
いまでいう、空気を読んで生きているのがうさ子だ。その場を支配している空気に従うことで、快適に生きられることを選択しているのだ。
のぶは、それができない。
ただ、走りたいならその辺の野原を走れという黒井の意見ももっともだ。のぶは、時間のあるときに走ればいい。御免与町に戻った日にはひたすら走ればいい。そうすれば少しは気分もすっきりするだろう。