運転する女性の画像写真はイメージです Photo:PIXTA

パワハラ研修を受けた上司が部下にパワハラを繰り返すのはなぜか――。「研修会に出てるから大丈夫」と考える人ほど要注意です。また、部下をメンタル不調に追い込む上司に共通する課題は「コミュニケーション」です。具体的なシーンを想定して、適切なコミュニケーションの取り方を詳しく解説してもらいました。追い詰められた部下たちが静かに会社を去る前に、会社ができることは多くあります。解説は心療内科医で産業医の海原純子さんです。(構成/石井謙一郎)

赤信号で止まった部下の頭を
上司がポコっと叩いたワケ

 厚生労働省が行なった令和5年度の「労働安全衛生調査」によると、令和4年11月1日からの1年間にメンタル不調で1カ月以上休職した人がいる事業所は、13.5%だとあります。休職に至らずともメンタルに不調を来した人がいる職場となったら、何倍もあるはずです。

 この調査では、事業所の63.8%が「メンタルヘルス対策に取り組んでいる」と答えていますが、その手段は「ストレスチェック」や「メンタル不調者への必要な配慮の実施」です。「働き方改革」の一環として残業時間のチェックや有休取得が厳しく行なわれるようになっているとはいえ、これらはメンタルが不調になった人を見つけて支援する“対策”であって、増加傾向にあるメンタル不調者を出さないための“予防策”とはいえません。

 また、会社を辞めるつもりはないけれど、仕事に意欲や熱意をもたず、必要最低限しか関わらない「静かな退職」も広がっています。マイナビが20~59歳の男女3000人を対象に行なった「正社員のワークライフ・インテグレーション調査2024年版(2023年実績)」によると、「静かな退職をしている」と感じるかという質問に対して、実に48.2%が「そう感じる」と回答しているのです。