日本を含めた世界各国の経済情勢は、アメリカとの国際収支の動向で左右される度合いが大きい。日本経済に関しては、とくにそうである。したがって、日本経済の今後を見るためにも、アメリカの国際収支動向を見ることが重要だ(*注1)。
アメリカの輸入は、2008年の秋から冬にかけて急減した。四半期計数で見た財サービスの輸入は、ピーク時(2008年第Ⅲ四半期)の988億ドル程度から、09年第Ⅰ四半期の707億ドルまで、わずか数カ月のうちに28%も減少した(【図表1】参照)。これによって、日本や中国をはじめとする輸出国の経済は大きな打撃を受けた。また、アメリカの貿易収支と経常収支の赤字額も、ピーク時の値から大きく減少した(【図表2】参照)。
こうした急減過程は今年の春ごろに終了し、その後若干持ち直した。図には示していないが、月別の数字を見ると、赤字額は安定してきたように見える。今後も、たぶんこの水準が続くのではないだろうか。そうであるとすれば、現在の状況が、新しい均衡を示していると考えられるわけだ。
*注1 ここで用いているデータは、アメリカ商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis)による国際収支データである。貿易収支のデータとしては、この他にアメリカ商務省統計局(U.S. Census Bureau)による外国貿易データがある。これらのデータは、定義の違い等があるため、同一値ではない。
中国に比べて、
日本はずっと大きな打撃を受けた
前述のように、アメリカの輸入は急減した。ただし、輸入国別に見ると、日本からの輸入と中国からの輸入にはかなりの差が見られる。
第1に、ピーク時水準からの落ち込みは、日本のほうが激しい。日本からの最近時点の輸入は、ピーク時(06年第Ⅳ四半期)に比べて46.9%減少した。それに対して、中国からの最近時点の輸入は、ピーク時(08年第Ⅲ四半期)に比べて21.2%しか減少していない。