2024.3.14
株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本、春闘高賃上げは“悪循環”?
日経平均株価は最高値更新だが、GDPや家計消費、輸出数量、鉱工業生産指数などさまざまな指標でみた日本の経済活動は停滞している。その半面で円ベース輸入物価が下落しているのに消費者物価は上昇し経済の一部には賃金上昇が物価を引き上げている…
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『1940年体制―さらば戦時経済』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』『仮想通貨革命』『ブロックチェーン革命』など。近著に『中国が世界を攪乱する』『経験なき経済危機』『書くことについて』『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』『「超」英語独学法』などがある。野口悠紀雄ホームページ
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2024.3.14
日経平均株価は最高値更新だが、GDPや家計消費、輸出数量、鉱工業生産指数などさまざまな指標でみた日本の経済活動は停滞している。その半面で円ベース輸入物価が下落しているのに消費者物価は上昇し経済の一部には賃金上昇が物価を引き上げている…
2024.3.7
コロナ禍をはさんだ2019年から23年の間にアメリカ経済は成長したが、日本はマイナス成長だった。アメリカではIT企業を中心として技術革新が起ったのに日本では起きなかったからだ。春闘賃上げに期待する声が高まるが、賃金が成長をけん引するのでは…
2024.2.29
歴史的インフレ局面でも米国では実質賃金は上昇、一方で日本は下落が続くのは経済の成長力や金融政策の差が大きい。米国はITなどに支えられた経済の活況がインフレを生んだ要因でもあるのに対して、日本は経済停滞が続く中で緩和政策が輸入インフレ…
2024.2.22
日経平均株価は年初来15%を超える上昇でバブル期の最高値更新が目前の状況だ。だが国内総生産が直近公表の昨年10~12月期で2四半期連続のマイナス成長、実質賃金も下落を続けている状況と明らかに矛盾する。高株価を支える企業業績好調の基盤もよ…
2024.2.15
中国経済の停滞の原因は不動産バブル崩壊や少子化・人口減少もあるが、最大のものは強権的な習政権による経済活動への過剰な介入だ。アント・グループの上場停止に象徴されるIT企業などへの締め付けが今後の中国の成長力を大きく抑える懸念があり、…
2024.2.8
政府は2025年度に「基礎的財政収支を黒字化する」財政再建目標を今なお掲げるが、相変わらず非現実的な前提が目立つ。とりわけ「成長実現ケース」での「長期金利3%台半ば」の想定は日銀の金融政策と整合的なのか、成長実現が可能なのかは極めて怪…
2024.2.1
日経平均株価がバブル後の最高値を更新している。日本は「失われた30年」からやっと抜け出し始めたとの声もあるが、GDPは90年代から横ばいで古い産業構造のままだ。ITや創薬が成長をけん引するアメリカと比較すると、「最高値」の中身は空虚でみす…
2024.1.25
新しいNISAが株価上昇を支え日本再生の鍵であるかのように言われるが、従来の税制上のメリットがなくなるのでリスク投資を増やす効果を持たないと考えられる。そもそも政府が税制優遇までして「貯蓄から投資へ」を煽る必要性があるのかも疑問だ。
2024.1.18
介護は、高齢になればほとんどの人が避けて通れない問題だが、要介護人口は、2040年には現在の1.4倍以上の988万人になると予測される。一方で労働年齢人口は減るため負担の増加が不可避だ。24年度には介護保険料や自己負担率の引き上げが議論される…
2024.1.11
日本の賃金上昇は輸入コストの急騰による物価上昇によって引き起こされたものであり、日銀が金融政策正常化の前提にしている「賃金と物価の好循環」は実現していない。しかし正常化は生産性を向上させ賃金上昇による本当の「好循環」実現のために必…
2024.1.4
いま多くの人が知りたいのは安心して老後生活を送れる社会が約束されるのかどうかだ。政府は社会保障制度を中心として信頼できる見取り図を提供する必要がある。2024年は公的年金財政検証の年であり実質賃金の現実的な見通し採用や医療介護保険の自…
2023.12.28
企業利益が好調なのは、日銀の金融緩和による円安のためだと言われるが、法人企業統計調査を見ると円安が利益を増やす効果はそれほど大きくない。その半面で、円安は輸入物価上昇を通じて消費者物価を引上げ実質賃金の伸びをマイナスにしている。こ…
2023.12.21
2024度税制改正では、防衛費増額のための増税が2年連続で先送りされ、少子化対策には筋違いの医療保険からの支援金が考えられるなど、国民を欺く財源措置が目に余る。一方で効果が疑問視される定額減税や賃上げ税制拡充が盛り込まれた。その場しの…
2023.12.14
日本の国際競争力低下の大きな要因は人材の質の低下だ。最近の国際ランキングでは企業の「上級管理職の国際経験」は世界最下位、英語力87位という結果だ。こうした状況は経営者の国際感覚にもつながり日本衰退の少なからぬ原因になっていると思われ…
2023.12.7
介護保険の保険料率が2024年度から引き上げられるが、介護人材の逼迫に対処するには賃金の引き上げが不可欠だ。ただし同時に保険料の公平な負担を担保する金融所得総合課税化や労働移動を円滑化する取り組みが必要だ。
2023.11.30
GDPが伸び悩む大きな原因は実質賃金の低下で家計最終消費支出が増えないことだ。状況を改善するには企業の生産性を上げることが王道だが、時間がかかる。まずは為替レートを円高に導いて物価上昇を食い止めることだ。
2023.11.23
日本でも長期金利が上昇し始めているが、これまでの異常な低金利がもたらした問題の本質は収益性の低い投資や無駄な財政支出が行なわれたことだ。「金利がある世界」への復帰によって資源配分の歪みの是正が期待される。
2023.11.16
円安は国内の物価上昇率を引き上げ実質賃金を下落させている。政府と日銀は物価上昇に対しては逆の対応をする一方で円安を放置し事態は悪化するばかりだ。現状から脱却するためには実質賃金の上昇を政策目標とすべきだ。
2023.11.9
岸田首相が主導したな所得減税は人気取り政策として批判を浴びるが、問題はそれ以上に深刻だ。防衛費や社会保障などの安定財源確保や所得税の不公平是正など山積する財政の課題を放置しており全く正当化できない。
2023.11.2
石油ショックで日本は原油依存を大きく変え、労使協調による賃上げ抑制で主要国でいち早く成長回復につなげた。しかしその成功が日本型システムに対する過剰の信頼を招き、その後の世界経済の変化に対応する障害となった。
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