関税地獄#10Photo:123RF

米国のトランプ政権が医薬品についても関税強化を予告している。米国は世界最大の医薬品市場であるが故に、本当に強化されれば日本の製薬会社への打撃は計り知れない。一部の業界アナリストは関税強化が業界再編の呼び水となるシナリオにも言及する。特集『関税地獄 逆境の日本企業』の本稿では、トランプ関税が業界再編のきっかけとなりかねない理由について解説する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

一定程度織り込んだアステラスも
「説明できる粒度の分析ではない」

 米国のトランプ政権のいわゆる「トランプ関税」。その対象として、医薬品も挙がっており、製薬業界にとっては重大な関心事となっている。

 本稿執筆時点で2025年3月期通期や25年1~3月期の決算会見を終えた大手製薬会社の経営幹部からは、「インパクトが明確になった段階でアップデートする」(第一三共)、「何に対して関税がかかるのかも不確実、不確定」(中外製薬)などと、戸惑いの声が相次ぎ漏れた。アステラス製薬は関税強化の影響を通期業績予想に一定程度盛り込んだが、「ご説明できるような粒度の分析ではない」と詳細な説明は避けた。

 確かに関税強化の影響を予想しようにも、「重大な疾患の治療薬と、それほどではない物とで税率に差をつけるのではないか」「最終製品にだけ課されるのか、原薬も対象なのか」など疑問点は多い。そのため現時点で影響額は算定不能な状態だ。

 ただ、いずれにせよ米国は世界最大の医薬品市場、すなわち大手製薬会社が成長を目指す上で不可欠な戦いの場であり、今後の経営方針の熟考は避けられないだろう。

 トランプ関税に製薬業界はどう対応するのか。実は、証券アナリストの中には、製薬業界再編の可能性まで視野に入れる者もいるが、果たしてどうなるのか。