12月もまだ半分残っていることを考えると、やや早い気もするが、今回は2008年の資産運用を振り返るとともに、来年2009年の展望を考察したい。参考にするのは12月14日日曜日の日経新聞13面(マネー生活欄)に掲載された「08年運用通信簿」だ。2007年末に約100万円を金融商品に投資していたとすると、今はいくらになっているのか。代表的な個人向けの金融商品ごとに損益の一覧を示している(元本は2007年12月28日時点の投資額で、時価は2008年12月5日の評価額)。
要約すれば、利回りがプラスになったのは個人向け国債(プラス0.7%)のみで、他は惨憺たる有様だ。まず国内株式で商品例とされたのは、野村アセットマネジメントが運用する東証株価指数(TOPIX)連動型ETF(上場投資信託)で、2007年末時点で99万8300円分を購入すると、2008年12月5日の時価は53万7340円にほぼ半減したという。分配金を加えても、利回りはマイナス45.5%だった。
外国株式はさらにひどくて、ニューヨークダウ工業株30種平均連動型ETF(販売会社は野村證券)は、47.3%マイナス、MSCIのエマージングマーケット指数に連動するETF(商品例は楽天証券の「iシェアーズMSCIエマージング・マーケット・インデックス・ファンド」)はマイナス63.2%だった。外国債券では、グローバル・ソブリン・オープン(いちよし証券)がマイナス18.9%。外貨建てMMFは、米ドル、ユーロ、豪ドルの順に、マイナス18.1%、マイナス27.9%、マイナス38.8%となった。
不動産投資信託(REIT)の運用利回りも、ひどい。運用通信簿で採用された三菱地所系の「ジャパンリアルエステート」はマイナス47.6%だ。また、金融危機を語る人たちが大好きな金地金もマイナス25.9%となった。
目下の状況は「100年に一度の危機」と言われており、その言葉を統計的に愚直に解釈すれば、説明が付かないわけではない。たとえば、ボラティリティを小さめに15%とみても、株式の45.5%という落ち込みは3標準偏差マイナスのイベントくらいの状況になっている。金融の世界ではマイナス2標準偏差が通常想定される最悪の事態であり、マイナス3標準偏差の事態を想定しないことが多い。