「いつも浅い話ばかりで、深い会話ができない」「踏み込んだ質問は避けて、当たり障りのない話ばかりしてしまう」上司や部下・同僚、取引先・お客さん、家族・友人との人間関係がうまくいかず「このままでいいのか」と自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
世界16カ国で続々刊行され、累計26万部を超えるベストセラーとなった『QUEST「質問」の哲学――「究極の知性」と「勇敢な思考」をもたらす』から「人生が変わるコミュニケーションの技術と考え方」を本記事で紹介します。

無視ではなく「教えて」と聞く
私のパートナーは、愚痴をこぼす才能がある。
たとえ30分でも睡眠不足だと、たちまち頭上に暗雲が立ち込め始める。
彼はまた、頭に浮かんだことを何でも言葉にしないと気が済まない、豊かな表現力の持ち主でもある。だから、不機嫌の極みにあるときは、猛烈な「言葉の下痢」に襲われる。
つまり、ありとあらゆることに大声で文句を言う。
私は自分の問題を他人に迷惑をかけずに解決するのを好む。
だから、一緒に住んでいる人間に当たり散らすような彼の行動には、かなりイライラしてしまう。
そしてまず、彼の不機嫌さをたいした問題として扱わないようにするか(どうせ、今日寝たらスッキリするでしょう)、そのような赤ん坊じみた振る舞いをするのをやめるようにたしなめるかのどちらかの行動を取ろうとする。
ご想像の通り、どちらもうまくいかないことが多い。むしろ、彼の不満の炎をさらに煽ってしまう。
睡眠不足に加えて、たまに文句を言うことも許してくれない口うるさいパートナー(私)のせいで、ますます不機嫌になってしまうのだ。
効果があるのは、「教えて」という魔法のフレーズだ。
今では、パートナーが不機嫌モードになっているとき(「どうしてこの靴箱みたいに狭い台所でものがなくなるんだ? 頭がおかしくなりそうだよ!」)は、「どうしたの? 教えて」と話しかけられるようになった。
それは、奇跡のような効果を起こしてくれる。彼の不機嫌はしばらく続くが、何か手伝えることはないかと尋ねると、いつの間にか嵐は過ぎ去っていく。
「教えて」という質問はバルブみたいなものだ。
それを開くと、溜め込んだ感情や抑圧された気持ち、それらに伴う愚痴が一気に外にあふれ出て、次第に勢いが弱まっていく。
この質問は、相手の心の内や考え方をうかがわせてくれる。
次に何をするかは、当然ながら相手との関係や、それをあなたがどうしたいかによる。何か深いことを探るのに役立ちそうだと感じ、もう少し掘り下げたいと思ったら、質問モードに入ってみよう。
「教えて」というフレーズを使った後、相手の答えを聞いて、特に問題がなさそうであれば、それまでしていたことに戻ればいい。
今度、周りで誰かが愚痴をこぼし始めたら、純粋な興味をもって「教えて」と尋ねてみよう。
アドバイスや質問、助けたいという気持ちを抑えて、「ねえ、教えて! 何があったの?」と切り出してみるのだ。
相手はこの招待にどう反応するだろうか? 相手とのやりとりにどう影響するだろうか?
(本記事は『QUEST「質問」の哲学――「究極の知性」と「勇敢な思考」をもたらす』の一部を抜粋・編集したものです)