いつも謙虚で控えめなのに、なぜか一目置かれる人がしていることとは? 世界で話題となり、日本でも20万部を超えたベストセラー『「静かな人」の戦略書』の著者、ジル・チャンが待望の新作を刊行。謙虚な人ならではの作戦を伝授する『「謙虚な人」の作戦帳――誰もが前に出たがる世界で控えめな人がうまくいく法』だ。台湾発、異例のベストセラーとなっている同書より、特別に内容の一部を公開する。

甲子園駅にあった一言
この文章を書いているいま、日本ではちょうど甲子園の試合が行われている。
全国放送のなか、地元や同級生たちの期待を一身に背負って、負けたらおしまいというトーナメント戦を闘う状況は、10代の選手たちにとっていったいどれだけのプレッシャーだろうか。
甲子園駅の改修前、駅の階段には「高校球児の98%がここで敗者になる。そしてもっと強くなる。」と書かれていた。
そのとおり、1位の座は一度も負けなかったチームに与えられるが、ほかのチームだってもっと強くなる。失敗は人をさらに強くするのだ。
「失敗は存在しない」と考える
NBA(全米バスケットボール協会)、ミルウォーキー・バックスのスター選手ヤニス・アデトクンボの逸話もいい。
2023年のプレーオフで番狂わせが起き、強豪チームであるバックスは1試合目で敗退してしまった。
試合後の記者会見で、キャプテンのヤニスは記者から、「今シーズンは失敗だったと思いますか?」と質問された。
ヤニスは明らかにこの質問が気に食わない様子で、頭を抱えて「まったく!」と言うとため息をついてから、「エリック、君は去年も同じ質問をしたよ」と返した。
そして、反対に記者に尋ねたのだ。
「君は毎年昇進する? しないよね。じゃあそれは、君の仕事が毎年失敗しているということ? 違うよね。君は毎年何かしらの目標に向かって真面目に仕事をしている。家族にいい暮らしをさせたいとか、両親に家を買いたいとか……。何であれ、君のやってきたすべては失敗じゃなくて、成功へ向けて歩み続けてるんだよ。マイケル・ジョーダンはNBAでプレーした15年のあいだに、6回優勝を経験してる。じゃあ残りの9年は失敗だった?」
「いいえ」と記者。
「だったら、君はどうしてこんな質問をするんだい? そもそも質問が間違ってるんだよ。スポーツに失敗はない」
同じ理屈で、人生に失敗はない。
私たちは成功に向けて歩み続けているだけなのだ。
(本記事は、ジル・チャン著『「謙虚な人」の作戦帳』からの抜粋です)