1つのグラフで
伝えるメッセージは1つに絞る

 次は、説得力の鍵を握る「データ(数字)」。そのデータを見せるグラフも非常に重要だ。

【図4】グラフが複数あるとわかりづらい

「いいグラフというのは、ズバリ、決裁者に考えさせないグラフです。要は、頭を使わなくてもすんなり読み解けることが大切なのです。一目で良い状況なのか悪い状況なのかがパッと伝わり、遅くても10秒以内に『このグラフは何を表現しているのか?』が理解できるようにします」

 そうするための基本が「ワンスライド=ワングラフ」だ。例えば、【図4】はある会社の地方支店ごとの売上実績と目標達成率を示すスライドだが、1枚の中にグラフがいくつもあって非常に理解しづらい。どうすればわかりやすくなるのか。

【図5】ワンスライド=ワングラフで瞬時に理解できるスライドに

「まず、伝えたいことを明確にします。このケースの場合、売上実績上位3支店は関東、関西、中部ですが、いずれも目標達成率が100%に届いていません。そこに警鐘を鳴らしたいとすれば、まず4~7月の推移は必要ない。7月単月の実績で比較すれば済む話です。そして【図5】のように、売上実績のグラフと目標達成率のグラフを別々にして、それぞれ1枚のスライドに掲載する。1つのグラフに複数の要素を入れ込むと、わかりづらくなってしまいますから。加えて、キーメッセージを入れると、一目で言いたいことが伝わります」

「逆L字」のレイアウトで
最も伝えたいことに目線を誘導

 さらに、スライドをよりいっそう見やすくするために覚えておきたいのが「逆L字の法則」。これは、何かを目にしたとき、その全体をスピーディに把握するために、人の目は「逆L字」の形で動くというクセを利用して、目線を誘導するテクニックだ。

【図6】「逆L字」でさらにわかりやすく

 これを使って、さらにブラッシュアップしたのが【図6】だ。キーメッセージの「来客数減少のため要対策」を「来客数減少」と「要対策」の2つに分け、両者の因果関係を三角形のマークで示した。

「メッセージを分解すると、文字数が減るのでさらに見やすくなります。しかも、グラフ→キーメッセージ①→キーメッセージ②と、逆L字で視線を誘導できるため、非常に理解しやすくなります。このスライドで最も訴えたいことは要対策というメッセージ。それが最短距離で決裁者の頭にインプットされるというわけです」