受験者数自体は前年並みだった2017年首都圏入試。しかし、20年から始まる新たな大学入試や、それに合わせて文部科学省が進める「学力の3要素」など、新しい教育のニーズをいかに取り入れていくか、保護者も学校も対応を迫られている。
試練にさらされる女子校 保護者のグローバル志向も本格化
中学受験率は、その年の中学受験者数の増減を知る上で一番基本となるデータだ。東京と神奈川の入試解禁日である2月1日の受験率は、2008年に14.8%とピークを迎え、その年の秋に起きたリーマンショックから下降し続け、15年には12.2%まで落ちている。17年は16年と同じ12.6%とわずかに復調した。2月1日の募集定員は100人ほどの減少だったが、受験者数は730人ほど減っている。首都圏の小6人口は18年、19年と減少傾向が続く見通しだ。
17年入試を振り返ると、女子の共学校人気が顕著で、最難関校でも共学校に受かったら入学を辞退されてしまう傾向がいささか衝撃的に表れている。
共学校人気は公立一貫校人気とも気脈を通じており、18年入試でも継続しそうだ。
森上教育研究所代表。1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾を経営後、88年から現職。中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」(oya-skill.com)セミナーをほぼ毎週主催。
著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』『中学受験 入りやすくてお得な学校』(ダイヤモンド社)
共学化と並び、主として女子に受けがいい新しい制服、最近では男子も気にする新校舎という3つの要素が、人気上昇の背景にあったものだが、17年の実績を見ると、学校間の「効果」のほどにばらつきが生じている。
合格実績の点では、文科省の指導で人気私立大が定員を大きく超える合格者を出さなくなり、多くの学校で早慶上理やGMARCHのような受験者に訴求する人気私立大学の合格率を落としている。
こうした逆風が吹く中で、人気私大実績を上げた学校もある。全般的に増やしたのが東京都市大付属で、理由は定かではないが攻玉社も好調だった。そして、東京農業大第一が東大に5人など絶好調だった。
一方で、初めて東大合格者を出す珍事に沸き立つ学校もあるが、とくに小学校附属のある学校の教育力を改めて見直す契機になりそうな出来事でもある。
そして何より、保護者のグローバル化志向が鮮明になり、英語力を高める教育への関心が高まり、それは中学校選びのみならず小学校の段階からも強まっている。
17年は「国際化元年」の様相を呈している。
では順に、17年入試を振り返りつつ、最後に18年入試に触れてみたい。