政策運営能力の弱さが失策を減らし
弱いからこそ奇策が出せた

トランプ1年目の経済は未熟さが奏功、今後は保護主義台頭に警戒Photo:AP/アフロ

 米国経済は、順調に景気拡大を続けている。米国の景気拡大期間は17年12月で102カ月となり、既に過去3番目の長さとなっている。このまま拡大が続けば、18年4月には過去2番目の長さと並び、19年7月には過去最長の景気拡大期間になる計算だ。

 喧騒と堅調さが併存している理由の一つは、トランプ大統領の度重なる問題発言とは裏腹に、経済にマイナスとなるような政策が実現しなかった点にある。政策運営能力が未熟であったが故に、トランプ政権の経済運営は、失策が少なかった。

 例えば、通商政策で懸念された保護主義の動きは、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定からの離脱を除けば、ほとんど本格化しなかった。官僚の指名人事が進まない等、なかなか体制が整わなかったことが幸いした面がある。厳しい態度で交渉しようにも、肝心の交渉担当者が不在では動きようがなかった。

 議会運営も、トランプ政権の思い通りには進まなかった。共和党が多数党であるとはいえ、特に上院では民主党との議席数の差が小さく、圧倒的な力があるわけではない。民主党との協力関係が築けないトランプ政権は、共和党からの造反を最低限に抑えるのに精いっぱいだった。その結果、混乱の発生が懸念されたオバマケア廃止の公約等は、道半ばのまま1年を終えている。

 その一方で、経済にとってプラスになったのは、トランプ政権が限られた手札を有効に活用したことである。17年12月には、民主党の抵抗を封じる特別な議会手続きを使い、税制改革を実現に持ち込んだ。規制緩和についても、オバマ政権が導入した規制を、同様の手法で廃止に追い込んでいる。特別な手続きを利用したおかげであり、いつでも使える手法ではないが、弱いからこその奇策である。

 実は税制改革には、共和党の弱さが功を奏した面がある。成立した税制改革は、トランプ大統領の公約よりも、減税額がかなり小さくなった。共和党内の造反を防ぐために、財政赤字の拡大を懸念する保守派に配慮する必要があったからだが、そもそも景気は堅調であり、そこまで大型の減税が必要だったわけでもない。むしろ公約通りの大型減税となっていた場合には、景気の過熱によって利上げを急ぐ必要性が増す等の副作用が大きかったかもしれない。