拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第38回の講義では、「技術」に焦点を当て、拙著、『ダボス会議に見る世界のトップリーダーの話術』(東洋経済新報社)において述べたテーマを取り上げよう。
トランプ大統領が出席するダボス会議
1月23日からスイスのリゾート地、ダボスで始まった、世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」は、今年、トランプ大統領が出席するということで、世界のメディアの注目を集めている。
しかし、米国大統領としては、2000年のクリントン大統領以来、久しぶりにダボス会議に出席するトランプ大統領だが、彼が、一つ留意しておかなければならないことがある。
それは、ダボス会議とは、「国家リーダーの品評会」だということだ。
そして、ダボス会議とは、世界のトップリーダーたちが、互いに品評しあう場でもある。
そう述べると、読者の多くは、「そうか、では、トランプ大統領も、そうした重要な場では、発言内容をしっかり準備しなければならないな…」と思うかもしれない。
しかし、実は、問題は「発言内容」ではない。
ダボス会議ほどの場に出る国家リーダーならば、発言の内容が、それなりに聴かせるものであるのは、ある意味で、当然である。だから、それぞれの国で、トップリーダーを務めているのであろう(トランプ大統領は、この点でも、疑問符が付くのだが…)。
そして、世界の国家リーダーは、優れたスピーチライターを抱えることもできる。従って、良く練られたスピーチ原稿を準備することも、決して難しくはない。さらに、聴衆を意識したメッセージ戦略も十分に検討できる。
では、何が問題か。