2026年初めにベネズエラでの軍事作戦に関与した特殊部隊を称えるために、ノースカロライナ州フォートブラッグにある米陸軍基地フォートブラッグを訪問したトランプ大統領 Photo:Nathan Howard/gettyimages
不法移民摘発で犠牲者、全米で抗議運動
改めて問われる「米国人」とは誰なのか
米トランプ政権による大規模な不法移民の摘発は、その重点的な対象のひとつとされた中西部ミネソタ州のミネアポリスで、移民・税関捜査局(ICE)に抗議する市民2人が1月7日、24日に相次いで移民捜査官に射殺される事態となった。
2度目の事件の後、30日には「ナショナル・シャットダウン」と称する抗議運動が全米で展開された一方で、民主党がICEの取り締まり時にボディー・カメラによる撮影を義務付けるなどの改革を求めたほか、強引な取り締まりに共和党内からも批判の声が出ていた。
不法移民流入の玄関とされるメキシコとの南部国境から遠く離れた中西部での悲劇は、トランプ政権による移民政策の進め方への世論の風向きを変えかねない。
最初の射殺事件が起こった後の1月16日から19日にかけて米オンライン・メディアのPOLITICOが行った世論調査では、約半数がICEの手法を「行き過ぎ」と答えており、6割強がトランプ大統領による不法移民の大規模な摘発と国外退去のやり方を支持しないと答えた。
もっとも、同じ世論調査では、トランプ政権の大規模摘発・国外退去の方針については、これを支持する回答が約半数と、4割弱だった「支持しない」とする回答を上回っており、移民に対する世論の複雑な感情もうかがえる。
もともとミネアポリスには奴隷制廃止後に南部から黒人が多く流入し、その後もアジアやアフリカからの難民のコミュニティーが生まれるなど、さまざまな人々が定着に挑んできた、いわば自由や多様性などへの米国社会の試行錯誤が凝縮されている地域だ。
トランプ政権は州知事など民主系の指導者が率いることもあって、ミネソタ州やミネアポリスを政治的な標的にしてきた。2月12日には、トランプ政権の国境対策責任者がミネソタ州での大規模な移民摘発を終結すると発表したが、今回、ミネアポリスから広がった波紋は、不法移民対策の是非だけではなく、米国の有権者に「米国民」とは誰なのかを改めて問いかけている。
米国民を条件付けるのは、自由や平等といった米国の「理想」への共感なのか、歴史的な背景や民族的な色彩もある「文化や伝統」の共有なのか、といった問いかけだ。
一方で外交・安全保障政策では、トランプ政権にはベネズエラでの軍事作戦や「カナダ併合」発言、グリーンランド領有への意欲のように、自国の勢力圏を地理的に広げようとするかのような動きも見られる。
トランプ政権の米国第一主義の下で、「米国」の概念が揺れ動いている。






