トランプ大統領Photo:Tasos Katopodis/gettyimages

AI規制を政府で一本化狙うトランプ政権
事実上の規制緩和に州やMAGA派が反発

 トランプ米政権は、2025年12月11日に発表した大統領令で、州政府によるAI規制を制限し、全米で一本化する方針を明らかにした。現在の米国には、連邦政府による統一的なAI規制はなく、大統領令には今後の規制整備がうたわれている。

 狙いは、州政府による独自の規制を封じることで、実質的な規制緩和を進めることにあるようだ。

 州政府に独自の規制を許せば、50州による規制のパッチワークによって、AIの発展が妨げられると政権側は主張する。

 そうなれば、米国民が得られるはずの経済的な利益が損なわれるだけでなく、中国との競争にも劣後しかねない、というわけだ。

 だが、こうしたトランプ政権の動きに反発したのが、MAGA(Make America Great Again,米国を再び偉大に)派と呼ばれるトランプ大統領の支持者だ。MAGA派は、トランプ政権による規制緩和の背景に、巨大テック企業の発言力の高まりを感じている。ブルーカラーの白人など、成長に取り残されることを恐れる「忘れられた人々」を源流とするMAGA派にとって、栄華を極める巨大テック企業と蜜月関係を築くトランプ氏の姿勢は、容認しがたい裏切りにも見えるようだ。

 今年になって米議会では、州政府のAI規制の権限を制約する条項が、MAGA派による反発が一因で2度にわたって否決されている、それでもトランプ政権が大統領権限による強行突破に踏み込んだために、両者の亀裂の深さが注目されている。

 AIを巡っては、その活用拡大による若年層の雇用への悪影響や、サービス業などでの顧客に対する差別的な取り扱いなど、負の問題も指摘され、議論を呼んできた。

 とりわけデータセンターは、大量の電力を消費するため地域の電力料金が引き上げられるなど、住民の暮らしを直撃しており、誘致や規制を巡る議論になっている。

 AIが経済や暮らしに与える多大な影響を考えれば、AI規制の争点化は遅きに失した感があるが、中間選挙が予定される2026年11月に向けて、AIへの向き合い方が米国政治の争点と重い課題になりそうだ。