[主催者講演2]
従業員が獲得しているスキルがそのまま経済価値になり始めた

企業・個人双方の成長につながるタレントマネジメントとはコーナーストーンオンデマンドのチーフ・カスタマー・オフィサー、フランク・リッチャルディ氏

 続いて、「スキルエコノミー:スキルが経済価値を生む新しい社会へ」と題し、コーナーストーンオンデマンドのチーフ・カスタマー・オフィサー、フランク・リッチャルディ氏が講演した。

 第4次産業革命の真っ只中、デジタルディスラプション(デジタル時代の創造的破壊)と呼ばれる現象が起き、企業の存続年数の平均が1960年代の60年から、今では15年にまで減っている。なぜこんなに短くなったかというと、短期間に企業のビジネスが社会と合致しなくなってしまうからだ。世界は急速に変わりつつある。企業自体が変革していかなければ、社会の現象についていけなくなってしまう。

 こうした社会、企業の変革について述べた後、リッチャルディ氏は企業のバランスシートの変化を挙げ、従業員のスキルの重要性を説いた。

「1960年代の企業のバランスシートを見ると、最も大きいのは物理的な資産でした。しかし、今成長している企業のバランスシートで最も大きいのは、IP(知的財産)や人財といった目に見えない無形資産になっています。従業員が獲得しているスキルがそのまま企業価値、ひいては経済価値になり始めたのです。急速に社会が変わりつつある中、従業員は常に役に立つスキルを身につけていかなければならない。一方、企業もデジタル変革の中で生き残っていくためには従業員に新たなスキルをどんどん身につけさせなければなりません」

 しかし、世界的に見ても従業員のスキルは不足気味のようだ。次の調査結果を紹介した。デジタル変革による企業の破壊的な革新を期待するCEOは90%に及ぶが、適切なスキルを持つ人材が十分調達できていると考えているCEOはわずか30%しかいない。

 若い世代の人たちは、これまでとは完全にタイプが違ってきている。彼らの仕事に対する期待に応えることも重要だと話す。

「これまでは企業側はこういう勉強をしてこういうふうにキャリアを進めなさいと言ってきましたが、今では従業員がこういうことを学び、こういうふうにキャリアを築きたいと言うようになりました。これは日本企業にとっては大きな変化です。そしてさらに彼らは、パフォーマンスに対するリアルタイムのフィードバックを求めます。というのも、フェイスブックやインスタグラムに写真をアップしただけで、すぐに『いいね!』が何千も来るという時代に親しんできたからです」

 これからはグローバルな視点による従業員の公平な評価、スピーディなフィードバックが可能なプラットフォームの構築が必須となりそうだ。

 リッチャルディ氏は、アマゾンやマクドナルドなどのように、いくつかの変革を成し遂げた企業の共通点を次のように挙げた。

「共通しているのは、継続的に自らを評価し、常に自らを変え続けていること。それを成し遂げることができるのは人材開発に力を入れているからです。適切なタイミングで適切なスキルを持つ従業員が適切な場所にいるからこそ、革新的な市場にフィットするビジネスを起こすことができるのです」

 アマゾンのCHRO(最高人事責任者)は「コーナーストーンのグローバルタレントマネジメントプラットフォームは、アマゾンのシステムの中でビジネスプラットフォームに次ぐ重要なシステムだ」と言っているそうだ。「その理由は、私たちは彼らが信じられないほどのスピードでラーニングやスキルトレーニングを提供しているからです。実際、世界中の120万人の人たちに毎日、トレーニングを提供し続けています」(リッチャルディ氏)

 最後にリッチャルディ氏は、受講者に次のように語りかけた。

「これまで話したことは、遠い世界で起きていることではありません。皆さんの企業も従業員も変化を強いられています。未来に通じるために企業は今何をすればいいのか、従業員は何をすべきなのか、企業を成功に導くために今何ができるか。“皆さんは変革のスピードに対応できていますか?”ちょっと言い間違えました。“皆さんは生き残れますか?”というのが、今の状況にふさわしい質問の仕方だと思います」